facebook twitter hatena pocket 会員登録 会員登録(無料)
注目トピック

写真で振り返る、AI時代のマーケティング最前線「Marketing Native Fes 2025 Autumn」フォトレポート

最終更新日:2025.11.12

Marketing Native Fes 2025 Autumnが10月8日に行われ、多数のマーケターの皆さまにご参加いただき、盛況のうちに閉幕しました。「マーケティング戦略の本質やAI時代の可能性に迫る」をコンセプトに掲げ、幅広い業界からマーケターが集結。すぐに実践できる課題解決のヒントを求め、業界を超えた学びと交流が繰り広げられました。

約9時間にわたり、特別セッションや企業講演、テーブルディスカッション、懇親会、個別ミーティングなど、充実したプログラムが展開された本イベント。マーケター同士がともに学び、横のつながりを深めた当日の様子を、写真とともにお届けします。

(文:和泉 ゆかり、撮影:永山 昌克)

目次

特別セッション1「ブランドを強くする経営とマーケティング戦略 マーケター出身経営者が語る本質と思考法」

冒頭の特別セッションには、オルビスをV字回復へと導き、現在はポーラ 代表取締役社長としてブランドの再建に取り組む小林琢磨さんと、P&Gやロート製薬、ロクシタンジャポンなどで数々のブランドを成長させてきたStrategy Partners 代表取締役社長の西口一希さんにご登壇いただきました。

写真左から:
Strategy Partners 代表取締役社長、Wisdom Evolution Company株式会社 代表取締役社長 西口一希さん
ポーラ 代表取締役社長 小林琢磨さん

売上には「良い売上」と「悪い売上」があるといいます。セッションでは、新規獲得に携わる多くのマーケターが直面しがちな「悪い売上」につながる要因を、「ミルフィーユの崩壊メカニズム」という視点から解説いただきました。

ブランドの長期的な利益に貢献する「良い売上」を実現するためには、顧客構造の深い理解に基づいた価値創出が不可欠であること。さらにマーケティングと経営を統合的に捉える視点こそが、持続可能な企業成長の鍵となることなど、顧客起点のマーケティングで成果を上げ続けてきたお二人から、実践に基づく知見が共有されました。

テーブルディスカッション

特別セッションの後には、参加者によるテーブルディスカッションの時間が設けられました。

各テーブルではファシリテーターの進行のもと、参加者がセッション内容を振り返りながら、共感したポイントや自社での実践アイデアについて意見を交わしました。異なる業種・業界のマーケターたちが集う場ならではの、貴重な対話の時間となりました。

イベント中、計2回の席替えが行われ、参加者は新しいメンバーとの出会いとディスカッションを楽しんでいました。

休憩・ランチ休憩

講演の合間に設けられた休憩時間には、会場の各所で名刺交換が行われ、参加者同士の活発な交流が見られました。

また、ランチタイムには、食事を楽しみながら、より自由に語り合う姿が多く見られ、リラックスした雰囲気の中でネットワーキングが広がっていました。

企業講演「パナソニックが実践するマーケティング改革とAI活用とは? ─AIエージェントが実現するマーケティングの未来─」

最初のスポンサー様による企業講演では、パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 PXドリブンセンターDX企画部データマネジメント総括 兼 データ管理・運用課 課長の吉本健二さんとセールスフォース・ジャパン 製品統括本部 Director, Head of Marketing Cloudの島田崇史さんがご登壇されました。

パナソニックでは、マーケティングの実行体制が部門ごとに分散していたことからノウハウが蓄積されず、十分な成果を発揮できない課題がありました。そこで、2024年度からマーケティング全般を担当する部署を新設して運用を統合し、ナレッジを一元化。2025年度はさらに汎用AIエージェントとドメイン特化型AIエージェントの活用に取り組み、メールの配信量を担保した質の向上(パーソナライズ)、AIが理解できるデータの整備を推進して、より高度な施策を誰でも実行可能にする「高度平準化」に取り組んでいます。

パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 PXドリブンセンターDX企画部データマネジメント総括 兼 データ管理・運用課 課長 兼 パナソニックマーケティングジャパン ダイレクト事業戦略室 戦略企画部 主幹 吉本健二さん

講演では、パナソニックがSalesforceとともに描く次世代の顧客体験と、Agentic Marketing時代に求められるリーダーの視座、Agentic Marketingの事例について語られました。

セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 Director, Head of Marketing Cloud 島田崇史さん

企業講演「顧客接点を再定義する接客AIエージェントと戦略の実践」

続いてのスポンサー様による企業講演に登壇されたのは、ZEALS 執行役員の渡邊大介さん。

接客AIエージェントが持つ自由な対話力は、顧客接点のあり方を根本から変えつつあり、マーケティング戦略を加速させる強力なツールとして、注目されています。

そのような中、ZEALSは世界で15,000体以上の接客AIエージェントを生成。講演では、最新のテクノロジー動向や具体的な導入事例を交えながら、接客AIエージェントを戦略の中核に据え、実際の成果へとつなげるプロセスを実践的に解説しました。投影されたデモンストレーションのクオリティの高さに、会場の参加者たちは目を奪われていました。

ZEALS 執行役員 渡邊大介さん

ランチスポンサー「Web行動データ×生成AIで進化する顧客理解手法とは」

ランチスポンサー講演には、ヴァリューズ データマーケティング局 コンサルティングG ゼネラルマネジャーの岩村大輝さんにご登壇いただきました。

200万人規模のリアルなWeb行動ログデータと、分析を高度化・効率化する生成AIの活用により、生活者理解は新たな次元へと進化しています。データとAIが切り拓く“シン”次元の可能性について語っていただきました。

ヴァリューズ データマーケティング局 コンサルティングG ゼネラルマネジャー 岩村大輝さん

企業講演「迫りくる“AI格差”──『AI-ready』という必須のスタートライン」

ランチタイム後、午後最初のスポンサー様による企業講演には、SUPER STUDIO 執行役員CMOの飯尾元さんがご登壇されました。

AI活用で成果を上げている企業と、PoCの段階で止まってしまう企業。その格差は、今も広がり続けています。特に変化の激しいコマース領域では、AI活用の深度を深めるために、“AI-ready”であることが求められているといいます。

講演では『AIコマースプラットフォーム「ecforce」』を軸に、“AI-ready”な状態をいかに構築するかを解説。EC・コマース事業における業務のAI化を進める実践例を交えながら、具体的なアプローチが紹介されました。

SUPER STUDIO 執行役員CMO 飯尾元さん

企業講演「新規事業を成功させる3つの鍵──いいリードを見逃さないインテントマーケティング戦略」

Sales Marker Marketing Marker事業本部 本部長の花田海さんによるスポンサー様企業講演のテーマは、インテントマーケティング戦略。

ターゲット解像度の低さや独自価値の曖昧さなど、初期段階で多くの課題を抱えるBtoBの新規事業。これを成功させるためには、3つのポイントがあるといいます。

講演では、インテントマーケティングを通じて顧客のニーズを起点に“いいリード”を見逃さず商談につなげる具体的な方法が、最新知見と実例を交えて解説されました。

Sales Marker Marketing Marker事業本部 本部長 花田海さん

企業講演「AI検索が変える顧客接点〜ブランドが埋もれないための実践アプローチ〜」

続いてのスポンサー企業講演には、CINC マーケティングDX事業本部 シニアパートナーの矢野孝典とスタンバイ COO室 室長の上野雅博さんが登壇しました。

今やマーケティングに欠かせない「AI検索サービス」。一方で、自社のブランドやサービスがAI検索で取り上げられるための具体策は、これまでほとんど語られてきませんでした。

今後は、AI検索の回答で言及されないブランドは顧客接点を大きく損なう時代になっていきます。講演では、CINCによる最先端の分析をもとに、実践的なAI検索対策が解説されました。

CINC マーケティングDX事業本部 シニアパートナー 矢野孝典

スタンバイ COO室 室長 上野雅博さん

特別セッション2「AI時代のマーケティング戦略──AIと人の協働による戦略策定のリアルと可能性」

特別セッション2は、日清食品ホールディングス 執行役員 CIO グループ情報責任者の成田 敏博さん、メルカリ AI strategyのハヤカワ五味さん、モデレーターとしてパーソルテンプスタッフ 執行役員CMOの友澤大輔さんにご登壇いただきました。

写真左から:
パーソルテンプスタッフ 執行役員CMO 友澤大輔さん
日清食品ホールディングス執行役員 CIO グループ情報責任者 成田敏博さん
メルカリ AI strategy ハヤカワ五味さん

両社の事例を通して示されたのは、AI活用における成功の鍵は、「経営トップの強いリーダーシップ」「現場に根ざしたツール開発」「段階的かつ継続的な組織変革アプローチ」にあるということです。

また、AIを「人間の代替」ではなく「人間の能力拡張ツール」として位置づけ、創造性や戦略的思考といった人間固有の価値をより発揮するための基盤として活用することが重要であると語られました。

企業講演「体験型バナー×独自指標で認知拡大!Eskimi広告が実現する新たなブランディング戦略」

ギャプライズ Eskimi販売責任者の三宅博貴さんによるスポンサー様企業講演では、「Eskimi(エスキミ)DSP」が持つ新たな可能性について紹介されました。

Web広告における認知施策では、表示回数やクリック数がKPIとして用いられるのが一般的です。しかし、それは本当に適切な指標なのでしょうか。その点に疑問を感じているマーケターは少なくないはずです。

「Eskimi DSP」は、エンゲージメントやアテンションなどの観点から、認知の本質的な効果を可視化・計測できるプラットフォームです。講演では、具体的な活用事例や最新機能を交えながら、新しい認知施策のアプローチが実践的に解説されました。

ギャプライズ Eskimi販売責任者 三宅博貴さん

企業講演「事業成長を加速するために必要なマーケティングインハウスの考え方」

オプトによるスポンサー様企業講演には、 マーケティング・コンサルティング領域 上級執行役員:SVPの伊藤弘明さんがご登壇されました。

昨今のAIの進化は、マーケティングのインハウス化をさらに加速させています。持続的な事業成長を実現するには、マーケティングの自走化が欠かせません。

伊藤さんは「インハウス化において重要なのは、正しく組織にインストールすること。そのためには、まず現状の組織能力を把握し、明確なロードマップを描く必要がある」といいます。講演では、インハウス化の本質的な価値や支援事例が紹介されました。

オプト マーケティング・コンサルティング領域 上級執行役員:SVP 伊藤弘明さん

企業講演「生活者の心を動かす“ブランドアプリ”の現在地」

続いてのスポンサー様企業講演には、ヤプリ 執行役員CMO マーケティング本部 本部長の近藤嘉恒さんにご登壇いただきました。

スマートフォンの登場から約20年。生活者の情報の受発信はモバイル起点へと移行し、SNSやLINEなど接点が多様化する中で、タッチポイントの中心に位置する「公式アプリ」は、今や欠かせない存在となりました。しかし、「勝てるアプリ」はごくわずかであり、生活者の習慣に溶け込む仕掛けづくりが重要だといいます。

講演では、800以上のブランドアプリを支援してきたヤプリが、最新の事例をもとにブランドアプリの現在地と、これからの在り方について解説しました。

ヤプリ 執行役員CMO マーケティング本部 本部長 近藤嘉恒さん

企業講演「企業が抱える経営課題に、広告会社ならではの独自視点で応える社内クリエイティブブティック『Pers』」

読売広告社によるスポンサー様企業講演には、エグゼクティブクリエイティブディレクターの外山毅さんと、パースペクティブプロデューサー/クリエイティブディレクターの布田雄帆さんがご登壇されました。

企業の持続的成長にとって、ステークホルダーとの関係づくりの重要性は一段と高まっています。

読売広告社では、課題発見からエグゼキューションまで、ワンストップで実現する体制を整えており、講演では、ステークホルダーが持つ“多義のインサイト”を発見し、持続可能な価値共創ストーリーを描く独自メソッド「パースペクティブ・デザイン」が解説されました。さらに、クリエイティブ、マーケティング、営業と多様な部門出身のメンバーが、企業の経営課題と並走しながら事業成長を支援する社内クリエイティブブティック「Pers」(パース)の仕組みと独自アプローチも紹介されました。

読売広告社 エグゼクティブクリエイティブディレクター
外山毅さん

読売広告社 パースペクティブプロデューサー/クリエイティブディレクター 布田雄帆さん

企業講演「マーケティング戦略における重要課題」

最後のスポンサー様企業講演には、PwCコンサルティング フロントオフィス&エクスペリエンス事業部 パートナーの丸山貴久さんにご登壇いただきました。

マーケティング戦略の策定から施策への落とし込み、そして実行まで――。これらが一貫して整合し、マーケティング投資が事業成果に確実に結びついている企業は、実は多くありません。立案された数多くの戦略が実行に移されず、結果として経営リスクを招いてしまうケースもあるといいます。

講演では、現在のマーケティング戦略における主要な課題と、その解決に向けたヒントが提示されました。

PwCコンサルティング フロントオフィス&エクスペリエンス事業部 パートナー 丸山貴久さん

特別セッション3「ミツカン×DHC ヒットメーカーに学ぶ『インサイトを見極め、消費者の心を動かす方法』」

最後の特別セッションには、Mizkan Holdings 執行役員/Mizkan 代表取締役専務 兼 COOの槇亮次さん、ディーエイチシー 前執行役員CMOの櫻井容子さん、モデレーターとしてDazzle Fusion Inc. 代表/pucklin 代表取締役の尾澤恭子さんがご登壇されました。

写真左から:
Dazzle Fusion Inc.代表、pucklin 代表取締役 尾澤恭子さん
Mizkan Holdings 執行役員、Mizkan 代表取締役専務 兼 COO 槇亮次さん
ディーエイチシー 前執行役員CMO 櫻井容子さん

AIによってブランドは“拡張”されるのか――。本セッションでは「探求の定石と革新が生み出す最強のインサイト発掘術」をテーマに議論が繰り広げられました。

近年、マーケターの中には、「データ分析を重ねれば確実な答えが見つかる」と期待する人も少なくなく、AIがその錯覚を助長している面もあります。しかし重要なのは、仮説を立て、失敗を恐れずにトライアルアンドエラーを重ねること。AIはあくまで仮説構築を支援するツールであり、人間にしかできないコミュニケーションや心を動かす働きかけに注力するチームづくりが求められていると語られました。

懇親会・個別ミーティング

すべてのセッションと企業講演が終了し、プログラムは懇親会へと移りました。懇親会は、CINC 常務取締役 マーケティングDX事業本部 本部長の山地竜太、Marketing Native編集長の佐藤綾美による乾杯の音頭とともにスタートしました

懇親会のテーブルは課題別に分かれており、「マーケティング戦略」「ブランド世界観 ブランディング」「消費者インサイト活用」「SNS・デジタル広告活用」「人材採用・育成 組織づくり」「AIによる業務効率化・顧客体験向上」「EC・D2C立ち上げ・広告施策の効果測定・LTV向上」といったテーマごとに、同じ課題を持つ参加者同士が集まりました。互いの知見を共有し合い、新たな示唆やつながりを得る時間となりました。

懇親会と並行して、特設会場では専門知識を持つパートナー企業の担当者に直接相談できる個別ミーティングが開催されました。1対1で向き合える落ち着いた雰囲気の中、自社が抱える課題について熱心に意見交換を行う参加者の姿が見られました。

マーケティングの最前線に立つ参加者たちが、それぞれの現場で実践できる具体的な知見を持ち帰る、充実した一日となりました。学びと対話、そして新たなつながりが生まれた本イベントは、盛況のうちに幕を閉じました。

 

記事執筆者

和泉ゆかり

いずみ・ゆかり
IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。
執筆記事一覧
週2メルマガ

最新情報がメールで届く

登録

登録