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CMO2人が語り合う「AI×BtoBマーケティングの効果的な活用法と企業の責任、マーケターの考え方」【山口有希子×阿部剛士】

最終更新日:2024.10.31

急速に進化するAI。今後の成長や競争力の確保、イノベーションの創出などにAIが重要なカギを握るとして、各企業でAIの導入と活用が進んでいます。

では、実際に日本を代表する大手企業はAIについてどんな取り組みを行っているのでしょうか。また、マーケターはこれからAIとどのように向き合っていけば良いのでしょうか。

今回は横河電機CMOの阿部剛士さんとパナソニック コネクトCMOの山口有希子さんに「AIとBtoBマーケティング」の観点を基に、企業とマーケター個人が今すべきことと、これから行うべきこと、その背景にある考え方について語っていただきました。

(文:和泉ゆかり、構成:Marketing Native編集部・早川 巧)

※本記事は、Marketing Native Fes 2024 Summer特別セッション2の内容について、登壇者の方々の許可を得たうえで読みやすく編集したものです。

目次

阿部氏と山口氏が語る「AI論」

編集部 最初に自己紹介からお願いします。

阿部 私は半導体の世界で31年間、経験を積んだ後、8年前に横河電機に入社しました。現在はマーケティング本部でCMOとして、通常のマーケティング業務をはじめ、R&Dや特許など、幅広い分野を管轄しています。

山口 私は外資系IT企業でマーケティングに従事した後、6年半前にパナソニックに入社、現在はBtoBソリューションビジネスを担うパナソニック コネクトでマーケティングを統括しています。加えて人事部門やIT部門と連携しながら、企業のカルチャー改革など幅広い業務に携わっています。

編集部 まず前提として、AIの存在をどのように捉えているか、「AI論」をお聞かせください。

山口 テクノロジーには二面性があり、使い方次第で良くも悪くもなり得ると認識しています。個人としては、AIのような新しいテクノロジーは可能性を広げてくれると信じていまして、期待でワクワクしています。

阿部 私はもうAIを電気・水道・ガスのようなインフラと同じように捉えています。もう1つ考えているのはギリシャ神話のケンタウロスです。上半身が人間で、下半身がAI。戦国武将の武田信玄が語った騎馬隊の「人馬一体」のように、人間はAIと一体となる必要があり、そのためにはAIを乗りこなさなければいけません。AIを恐れるのではなく、使いこなすことが大切です。

また、AIは広く一般に利用される公共財として、万人に公平に使える存在になるべきだと考えます。

山口 高い専門性を持つ一部の人たちだけでなく、あまねくさまざまな方が普通に自然言語として使える時代が到来したのは、私も非常に興味深く、面白く感じています。

企業と顧客の双方がAIを活用する時代のマーケティング戦略

編集部 AIはマーケティング戦略にどのような変化をもたらすと考えますか。

阿部 マーケティングにおけるAIの活用は、現在では効率化の観点から主に戦術面(HOW)に重点が置かれています。戦略面でのAI活用はまだ限定的ですが、今後は進展していくと予想され、新しい価値を創造する領域でもAIが貢献していくでしょう。マーケティングのPDCAが自律的に回り始めると、人間が貢献できる部分が少なくなっていくと思われ、そのとき「人間は何をすべきか?」という議論が出てくるかもしれません。

山口 英国オックスフォード大学のニック・ボストロム教授は、AIには3つの発展段階があるとしています。第1段階は「オラクル型」で、主に質問に対して回答を提供します。次の「ジーニー型」では、さまざまなツールが相互に連携し、より高度な作業を実行できるようになると予想されます。

さらにその先には「ソブリン型」と呼ばれる段階が想定されています。この段階では、目的を設定するだけで自動的にPDCAサイクルが回り、AIが自律的に動作するようになります。

現時点では多くの企業が第1段階にありますが、AIの進化は非常に速いので、将来的な変化を意識しながら日々取り組んでいく姿勢が求められます。

阿部 あすの朝、目が覚めたら全てが変わっているかもしれない。それくらいのスピード感で第3段階まで到達するのではないでしょうか。そう思っておいたほうが良いでしょう。

編集部 具体的にどんな変化が業務に予想されますか。

山口 1つは、パーソナライズ化の加速です。AIにより膨大なデータを処理し、個々の顧客に合わせた詳細な分析を可能にすることで、高度なパーソナライゼーションが実現し、マーケティングはより精密で効果的なものになっていくと考えられます。

阿部 AIが貢献するマーケティング領域の1つは、分析可能な状態になっていない「非構造化データ」の活用です。多くの企業では、保有するデータのほとんどが非構造化データであると言われます。マーケティングの観点からは、この大量の非構造化データを適切に構造化し、質の高い、分析可能なデータに変換することが重要です。

これまでデータのクレンジングや整理は人力で行わざるを得ず、膨大な労力を要する作業でした。しかしAIの進化により、この過程が大幅に効率化されるでしょう。その結果、AIを活用することで、従来よりも多くのデータを迅速かつ効果的に処理し、有用な情報として活用できるようになると思います。もちろんマーケティングの戦略立案や戦術実行に影響を与えるでしょう。

加えて、私が注目しているのはAIの普及により、顧客自身も自分たちの購買行動や意思決定プロセスをより深く理解できるようになるということです。顧客はAIを通して、これまで気づかなかった自身の行動パターンや傾向を認識できるようになります。これは単なる振り返り(リフレクション)にとどまらず、新たな視点での捉え直し(リフレーミング)につながる可能性があります。つまり、企業側が顧客を理解し態度変容を促すのにAIを活用するのと同様、顧客側も自身の行動をAIで客観的に分析し、購買行動を変える可能性があるということです。企業側も顧客側も双方がAIを活用したとき、購買行動やカスタマージャーニーにどんな変化があるのか。その展開次第でマーケティング戦略に大きな影響があると予想され、興味深く考えています。従来の手段は通用しなくなるかもしれませんね。

マーケティングチームに求められるスキルセットの変化

編集部 マーケティングチームのスキルセットにはどのような変化が求められると考えますか。

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・企業はAIの倫理ルールを定め、責任者を置いて情報公開を
・暗黙知から形式知へ AIの活用事例
・私たちはAIとどう向き合っていくべきか

記事執筆者

和泉ゆかり

いずみ・ゆかり
IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。
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