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2020.03.26

事業主もベンダーも代理店も「愛」を語り合おう【前編】事業主は、自社とベンダー・代理店を愛し、ユーザーに愛を語ろう

事業主とベンダー・代理店が協力してマーケティング施策を進めると、残念ながら成果を上げられずに終わってしまうことがあります。そんな時、もしかすると足りなかったのは、お互いの「愛」かもしれません。

今回は、三井住友カード株式会社 IT戦略部で部長代理を務め、コンテンツマーケティングや広告運用などに詳しい福田保範さんに、事業主とベンダー・代理店に必要な「愛」についてご寄稿いただきました。事業主の方、ベンダー・代理店の方、どちらにとっても頷ける内容です。協力してプロジェクトを進める機会のある方は、ぜひお読みください。

私は株式会社アイ・エム・ジェイにて7年半、三井住友カード株式会社にて4年半ほどマーケティングに携わっている。代理店・ベンダーと事業主両方の体験をしている数少ないマーケターとして、お互いの立場から見た景色やポイントについて何度か記事を書かせていただいている。

事業主とベンダー・代理店はお互いの利害やプライドもあって完全に歩み寄ることは難しいのは承知しているが、実際は「立場や役割が違うから単純に知らなかったことによって起こるすれ違い」なだけだと感じている。私がそれぞれの懸け橋となって、少しでもプロジェクトが円滑に回り、よいプロジェクトが世に出ることを願って今回も筆を執っている。

今回は事業主、ベンダー・代理店それぞれに必要な「愛」というちょっと大それたテーマで前後編にわたり連載したい。

前編は「事業主に必要な愛」だ。事業主の方はぜひそれぞれの愛を持てているのかを確認してほしい。ベンダーや代理店の方は、事業主はこういうジレンマを持っているということを理解してもらえればと思う。文中の「あなた」は事業主の皆さんを想像しながら書いているが、ぜひベンダー・代理店の方も、事業主はこういう悩みや課題があると感じていただける内容だと思うので読んでいただきたい。

(文:三井住友カード株式会社 IT戦略部 部長代理 福田保範)

目次

自社への愛「自社を知る」

事業主であるあなたは、自社の商品やサービス、キャンペーンについてどれだけ愛を持って語れるだろうか。つい「競合他社のほうがいいのでは」と思いがちだが、隣の芝生は青く見えるだけではないだろうか?

私が三井住友カードに転職して社員に抱いたイメージ、そして前職のアイ・エム・ジェイで支援した企業の大半でも抱いたイメージ両方で言えるのだが、「こんないいサービスがあって、顧客対応もしっかりしていて、まじめにいろいろ良くしようと頑張っているのに自社のことにあまり自信がない」と社員が思っているケースが多い。きっと、長く勤めていると見えにくくなってしまうのかもしれない。

まずは、事業主であるあなたが自社のサービスや商品のすべてを本当に理解できているのかを知ろう。三井住友カードに転職しコンテンツマーケティングを立ち上げたときは、会社のサービスをすべて把握しようと勉強したのだが、社員でも一部しかしらないような、隠れてしまっている素晴らしいサービスやキャンペーンがたくさん存在した。実際、先輩社員に聞いても「そんなサービスあったの?」という返答が多かった。各社、調べてみると必ずと言っていいほどこういった「隠れ優良コンテンツ」がある。

これは、部署が違うだけでまったく情報が落ちてこないことがあったり、他の部署の商品やサービスを紹介して売れたとしても、自身の評価にはならないという根深い問題があるせいだ。どんなにユーザーのためになったとしても、自分にとっては不毛になってしまう。しかし、それでもユーザー・顧客に対して伝えるべき情報であったら、強い意志を持って伝えるべきだ。

例えば、自分の評価対象ではない商材のプロモーションとなったとしても、結果的に会社全体のブランディングにつながり、めぐりめぐって自身の商材の売り上げ増につながるかもしれない。スティーブ・ジョブズの言葉を借りれば、「点と点は必ずつながる」。

そして、実際に自社がどのように市場に思われているのか、ポジティブな面とネガティブな面の両方を把握しておくことが大事である。ポジティブであればそれを伸ばす・広める、ネガティブであればそれを補うプロモーションが打てればよいということになる。ネガティブな面ばかり見えてきがちだが、ポジティブな声もどんなに小さくてもしっかり集め、それを伝えることにもっと力を注ごう。

これは私の経験論にはなってしまうが、ネットで露出している不満の約10倍、ポジティブな声があると思っていい。普通に使えていることに対する感謝は、わざわざ言及されないからだ。小さな不満の声が気になってしまい、戸惑いが起こり、勇気が無くなってしまうかもしれない。しかし、その裏に隠された小さな声から感じられる、自社のことを愛してくれている多くのポジティブなユーザーに対して、しっかり伝えていくための活力を得よう。

あなたの会社は、あなたの想像以上に愛されているし、あなたはもっと自社のことを愛さなければならない。マーケティングをするうえで、自社への愛は必須である。

ユーザーへの愛「抜けもれなく伝える」

あなたが当たり前だと思っているサービスや付帯特典は、実はユーザーにとても重宝されているかもしれない。ベンダーや代理店にそれを伝えたら、もっとうまく訴求してくれるかもしれない。

逆に、そうであるのに伝えてないのであれば、ただの機会損失となっている。きちんと伝えていないこと自体、ユーザーに不利益を与えているという考え方もできる。そう、ユーザーへの愛が欠けているのだ。

まず、ユーザーはあなたの会社のサービスや商品を想像以上に理解していないと考えるべきだ。当たり前という認識は、マーケティングをするうえで一切排除したほうがよい。

そしていまや、One to Oneマーケティングが主流の中で、画一的な訴求をすることはもはや古い。そもそも「今自分たちが押し出そうとしていることは、本当に刺さるメッセージなのだろうか」という疑問はもちろん、ユーザーの嗜好が多様化している中で、ユーザーに刺さりやすいサービスや商品、キャンペーンの数や種類は多ければ多いほうがいいに決まっている。

この現状を打破するには、サービスや付帯特典をベンダーや代理店に伝えることが第一段階である。なぜなら、知らないことをクリエイティブに落としこみ、プロモーションすることはできないからだ。

私はこの課題を解決するために、なるべくプロジェクトが始まる前に自社のサービスや商品を説明する「ひけらかし勉強会」をやることをお勧めしている。ひけらかし勉強会はその名の通り、自分が知り得る自社のことを、ベンダーや代理店の方に向けて2時間ほどかけて発表する場である。

営業担当者が自社サービスを語るときに話す資料、採用活動などで会社紹介をする資料、ホームページのコンテンツを隅から隅まで見るでもなんでもいい。しっかり時間をとって支援いただく会社の担当全員と読み合わせることが大切だ。その勉強会では基本的なことでも「知らなかった」「このサービスいい」といった声が聞こえた。実際に、コンテンツ制作の際にその声を生かして記事化したり、SNSの投稿に生かすといった施策に反映されている。

また、この勉強会を実施するためにいろいろな部署から資料を取り寄せ、自分で読み込むことで自身の知識も増え、他部署とのコネクションも増える。いいこと尽くめだ。

自社のサービスや商品を徹底的に知り、それを抜けもれなく伝えようとすること。繰り返しになるが、これこそがユーザーへの愛である。

ベンダーや代理店への愛「期待値コントロール」

ベンダーにとって、事業主への提案は愛を披露する場。その場を安易に設定してはいないだろうか?そして、安易に事業主であるあなたから「発注いけそうです!」と思わせぶりな態度をとっていないだろうか?

事業を回していくうえでは、ベンダーや代理店のリソースと資金も当然必要だ。例えばあなたの会社が提案を依頼していたベンダー・代理店にあたかも必ず決裁できるようにふるまい、そのベンダー・代理店が当案件の確度を高めて他の提案を断ってしまったとしよう。そしてあなたの会社が決裁できなかったら?ベンダー・代理店のリソースは余り、資金も困ってしまう。本当に資金繰りが厳しくなる会社だってある。

ちなみに、会社によるが大枠確度の計算はこんな感じ。

✔確度A…内示。リソースの確保をバイネームで行い、事業計画にも反映。
✔確度B…提案済みで8割受注の計算。リソースもほぼ確保し、数値の読みに入っているケースも。
✔確度C…提案済みでまだどちらに転ぶかはわからない。追加提案次第。
✔確度D…アタック先。ヒアリング済で初回提案をどうするか検討段階。もしくはこれからヒアリング。
✔候補リスト先…コネクションがあるくらい。

確度D以下はまだアタックリストくらいのケースもあるが、事業主として気を付けないといけないのは確度B以上にされないようにする「期待値コントロール」。やり方は単純で、決裁できない理由と、そこの障壁が何になっているのかを丁寧に伝えるだけ。そして、「必ず発注します」という発言を事業主が安易にすることは絶対に厳禁。それは確度B以上になることを意味する。下手すると、確度Aになってしまい、リソース確保までされてしまうこともある。

期待値コントロールの意識があれば、変に気を持たせることもしないし、最後クロージングに何が必要なのかといった会話もできるようになる。

もちろん、はじめから確度が上がる確率がないのに提案を依頼することはもってのほかだ。提案には多大な時間と労力が込められていることは絶対に忘れてはいけない。提案をいただく時点で、自身にその提案を決裁に持っていく覚悟がなければ、その旨もしっかり伝えて断ろう。

別の連載では「仕事を安易に頼まない」「情報はなるべくすべて渡す」といったことも書いたが、これらはどちらかというと礼儀や仁義と言うほうが正しい。
ベンダーや代理店の担当への愛は、彼らが所属する会社に対する愛と言ってもいいかもしれない。

事業主こそ愛を持たなければならない

どうしても受発注の関係だと事業主の立場が上になりがちだ。そういうスタンスでは絶対にいけない。
自社のサービスや商品を愛し、ユーザー・顧客にその愛を抜けもれなく伝えてよりよい生活を送ってもらうために、代理店・ベンダーの方に協力していただき成果を上げる。そんなスタンスでいることで、よりよいプロジェクトが生まれるはずだ。

次回、ベンダーや代理店の方に向けて「ベンダーや代理店は、どこまで事業主のサービスを愛せるのだろうか」という内容で語る。

【筆者プロフィール】
福田保範(ふくだ・やすのり)
三井住友カード株式会社 IT戦略部 部長代理
2007年、株式会社アイ・エム・ジェイに入社。WebディレクターやSEOコンサルタント、マーケティングコンサルタントなどを務めた後、2015年6月に退社。2015年7月より三井住友カード株式会社にて、デジタルマーケティング全般に従事。予算ゼロからコンテンツサイトを立ち上げ、約2年で総PV数約800万へと成長させた経験を持つ。その他、コンテンツマーケティングサイトの複数立ち上げ、ソーシャルメディア、WEB広告などを担当している。

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