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2020.04.06

事業主もベンダーも代理店も「愛」を語り合おう【後編】ベンダーや代理店は、どこまで事業主のサービスを愛せるのだろうか

前編に引き続き、三井住友カード株式会社 IT戦略部 福田保範さんの寄稿をお届けします。後編のテーマは、ベンダー・代理店が持つべき「愛」についてです。

前回は事業主が顧客、ベンダー・代理店、自社にとって必要な愛を書いたが、今回はベンダー・代理店にとって必要な愛について語りたい。

私は7年半ほどベンダーにいたのだが、よく「事業主の支援に入っていても、いまいち入り込めない」という声を聞いたし、私自身その思いがあって事業主に転職した経緯がある。今回はその「入り込めない問題」が少しでも解決できるよう書いていきたい。
事業主の方は、ベンダーがこういったジレンマに陥っていることを理解して、できるだけ協力していただけると、よりよいプロジェクトの創出につながるだろう。

前編同様の案内となるが、今度の文章の「あなた」はベンダー・代理店の方を指して書いているが、ぜひ事業主の方も、ベンダー・代理店こういう悩みや課題があると感じていただける内容だと思うので読んでいただきたい。

(文:三井住友カード株式会社 IT戦略部 部長代理 福田保範)

目次

受託先のサービス・商品を愛せるか

私がベンダーにいたとき、プロジェクトの支援が開始する際はたいていその会社のサービスの理解をほぼ1からはじめる必要があった。大枠は知っていることが多いのだが、細かい仕様だとか、競合に比べてどこがいいとか、実は知らない魅力が必ず存在するのだが、それらを理解するのはなかなか根気がいる作業で、時間がかかる。

しかし、例えばWEBサイトの改善を支援するときは、コンバージョン導線がどうかとか、構成がどうとか、表面的な施策に話が行きがちである。

本来で言えば、受け持つ会社のサービスや商品やキャンペーンはどこが優れているのか、その優れた点をどう伝えればユーザーの心が動いてコンバージョンするのかという視点があった後に、細かい施策実施という流れであるべきだ。極論、デジタルをやめてリアルイベントやDMのほうがいい、という結論すら出るかもしれない。しかし、早く結果を出さなければいけないというプレッシャーもあり、局地的な戦いに行ってしまう。

この連載を読んでいるベンダーや代理店の方に問いたい。
あなたが担当する会社のサービスや商品についてどれくらい語れるだろうか。
営業担当者と同じように営業ができるか?そこまでは求められていないかもしれないが、私はそれくらいの意気込みでクリエイティブやプロモーションの提案をされたら、きっとその提案を受領し決裁するよう動くと思う。少なくとも私は、そういう提案をしていただいたベンダー・代理店の方にはよい返事をしてきたが、数は指で数えられるくらい少ない。

事業主からサービスや商品を売ったりプロモーションしたりすることを代理で請け負っている、または委託されているのであれば、そのサービスや商品を愛さなければ話にならない。しかし、割とそういった視点を持つという発想がなく、いきなり施策へと入っていることが大半なのではないだろうか。

大げさだっていい。好みに合わないサービスや商品を売るときは、自分をだますことになるかもしれない。それでも、請け負うのであれば、アクター・アクトレスとなってでも、愛を語ってほしい。それが事業主が求めることだ。

担当ミッションのKPIへの愛

あなたは、担当している会社のKPIにどれだけ一緒にコミットできるだろうか。表面的ではなく、KPIを達成できなかったら社内の評価や評判が下がる、という不退転の覚悟をもって、だ。

はっきり言ってベンダーや代理店からしてみると、提案した施策が失敗してKPIがピクリとも動かなかったとて、怒られて契約を切られるだけでおしまいだ。もちろん、社内の評価は下がるのかもしれないが、次のリベンジの場は別の顧客の案件において用意されることであろう。

一方事業主の担当は決裁のときにそれなりのプレゼンと成果へのコミットをしたはずだから、上司には追及されるし、評価だってもちろん下がる。その後も会社には残りその業務の担当は続くのだから、ダメージはしばらく残る。マーケティングの新たな施策がやりにくくなるかもしれない。

逆に、事業主にとってのKPIがとても上がったとしても、ベンダーや代理店からしてみると一プロジェクトの成功にしかならない。その事業主が急成長を遂げて世の中に大きなインパクトを与え、担当は素晴らしい評価が得られ、出世や給料増加につながったとしても、ベンダーや代理店の担当にその収益が入ることはない。

このKPIへの責任とインパクトがどうしても二社間では差が出てしまう。仕方ないのだが、この溝をいかにお互いが歩み寄れるかが肝となる。

そこで、ベンダーや代理店にとって絶対に忘れてはいけないのは「KPIをよくすることは、担当している会社のサービスや商品が世の中に広がり、人々の暮らしがよくなる」という『信念』だ。KPIを上げることがゴールなのではない。

何の「代理」をしているのか。何の「委託・請負」をしているのか。世の中をよくすることの委託や請負をしているのだ。ベンダーや代理店にいると、どうしてもこの視点を忘れてしまう。信念と表現したのは、本当に世の中がよくなるかどうかはわからないというのが本音だが、信じて支援することが重要だと考えているからだ。

今クライアントと握っているKPIを上げることは、世の中のためになるのだろうか。ただ数字を上げる取り組みになっていないだろうか?前編で書いた通り、事業主として愛をもっていないクライアントはそこまで望んでいないのかもしれないし、そんなことを言ったら「いいからやってほしい」と言われてしまうかもしれない。

KPIという数字だけを追うことはナンセンスであると、事業主、そしてベンダー・代理店両方がしっかり認識しあえるようになろう。

担当者が評価されることへの愛

私が事業主としてよい営業だと思うのは、自分が売りたいサービスを売るのではなく、「どういう結果が出たらあなたの評価が上がりますか?」と率直に聞いてくれる方だ。

というのも、事業主の担当はたいてい日常業務のほうがボリュームが多い。様々な日ごろの業務に追われながらプロモーション・マーケティングのことをしており、専任で何かしているということはほぼありえない。
その中で、評価を上げるために新たな施策にもチャレンジしていかなければならないが、それが一番見えやすいのが数字の評価だ。しかしながら、数字は因数分解していくと様々なものになる。ひとえにプロモーションと言っても、

①ブランディング(認知度、拡散数など)
②流入(訪問数、マーク数など)
③成果(申し込み、売り上げなど)
④LTV(顧客育成・解約防止など)

と様々なKPIがあり、本来③成果が評価される指標なのに①ブランディングの施策をやってしまっていては、どんなに成功したとしても担当の評価にはならず、継続や他の施策をやるモチベーションには到底ならない。たとえ間接貢献数が出せたとしても、③成果のミッションのユーザーにとっては直接貢献数がすべてであり、意味をなさない。逆に、①ブランディングがミッションなのに③成果のコンバージョンが多いといっても、同じく意味がない。

また、それぞれの成果が別部署の成果、もしくは会社全体の成果になるケースもあるが、それも意味がない。会社的には良いのだろうが、担当が課せられている成果の数字に響かなければ評価にはならないのである。

担当者は、会社的に別のサービスや商品を提供し、利益を得ることが良いことはわかっている。ユーザーが求めるものを提供することが良いこともわかっている。しかし、担当だって一人の人間だ。評価されないことをやることは限られた時間の中ではなかなか難しい。

これを理解することが担当者への愛だ。

どの成果が直接的な評価につながるかを理解する。よいプロジェクトだとしても、担当のKPIに副次的な効果しか及ぼさないのであれば、ポジティブに進めることは到底できない。それは私にだって言えることだ。

ベンダーや代理店の担当はこの視点を持って支援するだけで、事業主の担当との距離がずっと縮まりプロジェクトの受注確度が上がり、円滑にプロジェクトが進行すると思う。

商品サービスのプロモーション、担当を叱れるくらいの愛を

最後に。事業主がやりたいと言っている施策でも、ユーザーにとって間違えた伝え方だったり、社会的によくなかったり、サービスや商品の愛から逸れた訴求やプロモーションであったとしたら、それは間違っていると叱ってくれるくらいであってほしい。
事業主にとっては怠慢なのかもしれないし、ベンダーや代理店に求めすぎなこともわかっている。しかし、プロとしてそれくらいの姿勢を見せてくれるのであれば、多少値が張ったとしても、一緒にマーケティングをやっていけるパートナーとして文句を言わずにお願いすることにつながると思う。

イエスマンであってはいけない。プロジェクトをよくするために自分の意見を言える。これは前述のサービスへの愛、そしてプロとしての愛を存分に見せつけてほしい。

マーケティングへの愛

自社やサービスのことを愛する愛。一方的に押しつけず、相手を幸せにしようとする愛。これらが両方なければ、それはただの自己満足になってしまうであろう。

自社やサービスのことを愛し、ユーザーのことを思い、共に戦うベンダーや代理店または事業主を愛してプロモーションをすることができれば、それは間違いなく素晴らしいプロジェクトになると思うし、世の中をよくする試みになると確信している。

今回は『事業主もベンダーも代理店も「愛」を語り合おう』というメッセージを前後編で伝えてきた。少しでもお互いがお互いを愛することにつながり、よりよいプロジェクトが増えれば幸いだ。

【筆者プロフィール】

福田保範(ふくだ・やすのり)
三井住友カード株式会社 IT戦略部 部長代理
2007年、株式会社アイ・エム・ジェイに入社。WebディレクターやSEOコンサルタント、マーケティングコンサルタントなどを務めた後、2015年6月に退社。2015年7月より三井住友カード株式会社にて、デジタルマーケティング全般に従事。予算ゼロからコンテンツサイトを立ち上げ、約2年で総PV数約800万へと成長させた経験を持つ。その他、コンテンツマーケティングサイトの複数立ち上げ、ソーシャルメディア、WEB広告などを担当している。

 

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