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インタビュー

PR TIMES代表・山口拓己インタビュー「さあ海外へ再挑戦! 『行動者』に焦点を当てたPR事業が快進撃を続ける背景と、世界進出への意気込み」

最終更新日:2023.05.18

CEO Interview #09

PR TIMES代表取締役社長

山口 拓己

PR TIMESの快進撃が続いています。利用企業社数は2月15日に5万社を突破。しかも2020年6月2日に4万社を達成してから約8.5カ月での記録となり、新規登録のペースも毎月1000社超と加速しています。

ほかにもPR会社が複数存在する中で、なぜPR TIMESはこれほど多くの注目を集め続けることができるのでしょうか。さらにこれからどのように事業を発展させようとしているのでしょうか。

今回はPR TIMES代表取締役社長・山口拓己さんに話を聞きました。

あわせてPRパーソン向けに、「人の心を揺さぶるプレスリリース」を書くための考え方についても伺っています。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、写真:矢島 宏樹)

目次

市場と顧客を自ら定義し、競合を作らない

――中期経営計画(2016年発表)で掲げていた2020年度内における利用企業数5万社の事業目標突破、おめでとうございます。売り上げ、営業利益の伸びも素晴らしく、経営者としての手腕が称賛されています。好調さの背景を教えてください。

お客さまに恵まれたことに尽きると思います。お客さまに恵まれたからこそメディアの方に興味を持ってPR TIMESを利用いただけていますし、一般の生活者の方にも関心を持たれやすいプレスリリースを出してくださるから、PR TIMESのページビュー数が5200万PVまで伸びてきました。

それだけのページビュー数があるから、それまでプレスリリースは必要ないと考えていた企業の方にもPR TIMESを利用いただけるようになっているのだと思います。つまり、お客さまが全ての起点となって好循環が生まれ、それがPR TIMESの事業価値となり、その価値がまた新しいお客さまに利用いただく形で広がっているということです。ですから謙遜ではなく、お客さまのおかげとしか申し上げようがありません。

――山口さんたちが企業に対して、「こんなプレスリリースにしたほうが効果的ですよ」とアドバイスしてPRパーソンの育成を図ってきたのですか。

いえ、お客さまご自身がどんどん進化していきました。例えば、ある会社が10年以上前に出した最初のプレスリリースは、数百字の文章に写真素材1、2点を添えただけの簡潔なものでした。それが今ではプレスリリースの枠を超えて、情報発信にとどまらずコンテンツとして楽しんでいただける内容に進化しています。

切り口や視点、見せ方を工夫して進化したプレスリリースを積極的に発信することで、結果的にその情報を必要とする人が増え、読んだ人がまたPR TIMESにアクセスして、今度は自分もプレスリリースで情報発信をする。そういう好循環がPR TIMESで生まれ、加速することで目標の達成につながったのだと思います。

――好循環が生まれるきっかけは何ですか。

1つのきっかけは、スマートフォンとSNSの普及です。それ以前も企業とメディアだけでなく、その先にいる生活者も含めた3者を結ぶプラットフォームにしたいというコンセプトはありましたが、生活者の方に見ていただくハードルは高く、コンセプト倒れの状態でした。

流れが変わりだしたのは2010年にスマートフォンが普及し始めてからです。PR TIMESのページビュー数を見ると、2011年頃からPCに代わってスマホで読む人が増えています。そのとき単純に「PR TIMESをスマホで読む人が増えてきた」で終わらせず、「スマホによって人々の行動が大きく変化するかもしれない」と気づけたのが大きな転換点になりました。

ちょうどその頃、SNSについてもTwitterやFacebookのユーザー数が日本で1000万人を超えています。SNSによる情報発信は人々のライフスタイルやビジネスにも影響を与えていて、一例は「インスタ映え」を意識した消費行動です。その高まりを受けて企業側も、ホテルのナイトプールのようにインスタ映えするイベントや装飾を施す動きが生まれました。

コミュニケーションツールが変わると、表現だけでなく、人々の行動やビジネスにも変化をもたらします。PR TIMESは、企業・団体と大衆との戦略的コミュニケーションプロセスという従来のPRの枠組みを超えて、スマホやSNSの普及によって生じたライフスタイルやビジネスに関するさまざまな変化に気づき、その流れをうまく捉えられることができたと考えています。

――企業・団体とメディアのやりとりだけだった従来のプレスリリースから、スマホとSNSの浸透を受けて、一般の生活者を巻き込み、発信者と受信者、閲覧者を多様な形に変化させられたのが飛躍のきっかけになったということですか。

そうですね。その上で、情報発信をこれからさらに活性化させるには、発信内容だけでなく発信に至るまでの事象にも目を向ける必要がありますし、その事象が社会にどれくらいのインパクトを与えられるかについてももっと深く考えることが重要だと認識しています。つまり表現を良くするだけでなく、発信する中身をもっと深めていこうという考え方です。

そこでPR TIMESでは人々の行動に良い影響を与える、私たちが言うところの「行動者」を増やそうと考えています。行動者とは、人の心を揺さぶり、社会にインパクトを与えられるような情報発信ができる人のことです。

私たちは行動者にフォーカスしてビジネスを展開していますので、市場はすごくニッチだと思います。上場するときも「競合はどこですか?」と何度か聞かれましたが、PR会社が競合だと認識していないので、競合名を答えたことはありません。「〇〇社と比較するとどうですか?」と聞かれたら答えますが、そもそも私たちが目指す世界はPRという広いくくりで十分に捉えられるものではないと思います。もちろん、営業のときは「プレスリリース業界シェアNo.1」とは言いますが、私たちはこれまで競合を作らず、自ら市場と顧客を定義することで事業拡大を図ってきました。

主役は会社ではなく、「個」の活躍を「ヒーロー」に

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・「気を引き締めよう」と思っている時点で緩んでいる証拠
・良いプレスリリースを書くには、日々の仕事に誠実に向き合うこと

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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