コロナショックで変わったことの1つにイベントやセミナーの開催方法が挙げられます。ZoomなどのWeb会議ツールが一般化するにつれ、これまでオフラインのイベントやセミナーを中心に集客していたB2B企業でも、ウェビナーを開催するところが多く見られるようになりました。緊急事態宣言が段階的に解除され、日常を取り戻しつつある昨今ですが、コロナをきっかけに有用性が再確認されたウェビナーは今後もマーケティングチャネルの1つとなりそうです。
2020年6月現在、ウェビナーは毎日のようにたくさん開催されるほど活況を呈していますが、その半面、観客が分散して集客が難しくなりつつあります。それでは、どうすれば集客力のあるB2B向けのウェビナーを開くことができ、また、リードの獲得につながるのでしょうか。
今回はB2Bマーケティングの手法に詳しく、自身でも多くのB2Bウェビナーを手がけ、noteでも多くのノウハウを公開している、株式会社インターパークCOO/CMOの高井伸さんに寄稿していただきました。
目次
【寄稿】
今年の4月から様々なウェビナーが乱立して、戦国時代になってきています。
理由は誰の目にも明白で、今回のコロナショックですね。
配信側の企業の狙いとしては、今までのマーケティングチャネルの代替えとして、ウェビナーを利用しはじめているという形です。視聴者側としては情報収集の新しい方法として利用しているという感じですね。
特に4月7日に緊急事態宣言が出てからは、リモートワークが一気に加速したので、家にいる人が増えて、PCやスマホを相手に仕事をする時間が急増しました。それによって需要と供給が一致して一気にウェビナーが増えてきたというところでしょうか。
ウェビナーでどうやって集客するか?
では単刀直入に本題に入っていきます。ウェビナーで集客をしようと思ったら、大事なポイントは3つです。
・ライブ感
・興味をひく客観的なテーマ
・魅力的な登壇者
これだけですね。
そしてもう一つ大事な視点があります。視聴者はウェビナーをパソコンかスマートフォンで見ます。なので、ウェビナーはセミナーを見るというよりも「動画を見る」という感覚に近いんですよね。この前提を押さえておくことはとても大事です。理由は説明していきます。
ウェビナーはニッチメディアとして考える
ウェビナーの名称から、セミナーのオンラインバージョンみたいなイメージを抱きがちですが、ウェビナーはセミナーの延長線上で考えないほうが良いと思っています。
動画とセミナーとメディア。この3点の特長を織り込んだ「ニッチメディア」として考えるとウェビナーの本質は理解できるんじゃないかなと思っています。
(画像作成:高井伸)
動画との差別化はライブ感。マスメディアとの差別化はテーマのエッジの深さ。セミナーとの違いは、テレビ番組やラジオのようなコンテンツ要素を含んだメディア感だと思います。
上述の通り、ウェビナーはセミナーを見るというよりも「動画を見る」という感覚に近いので、今までセミナーでやっていたようなスライドでプレゼンしていくような内容なら、事前に録画した動画を流せば良く、生放送である必要がありません。
なので、ウェビナーの場合、ライブ感やテレビ番組のような面白みのある構成が必要になるんですよね。宣伝を1時間も動画で見せられるって考えただけでも普通に辛いですよね。
セミナーが開催できるようになる頃には、「リアルに足を運んでもらう意味は?」みたいな別の課題が発生するかもしれませんね。
ウェビナーの具体例
いくつかウェビナーを開催させて頂いていますが、どれも広告宣伝費はかけずに集客をしています。プレスリリースを発行するくらいですかね。
・2020年4月 ゲームチェンジした世界でインサイドセールスは営業を変えるか?
(画像提供:高井伸)
・今、スポーツにできることはなんだろう?プロスポーツの現状ってどうなってるの?
(画像提供:高井伸)
例えばこんな感じのテーマのウェビナーを開催させてもらいました。2つ合わせて1000名近くの申し込みをもらって、歩止まりも85%くらいなので、イベントによるリード獲得と参加率という意味ではかなり優秀な数値かなと思います。しかも広告費用はゼロですし、リードジェネレーションの施策という意味では大成功と言えます。
両方のコンテンツでともに共通しているのは、コンテンツに客観性を担保しているという点です。「興味をひく客観的なテーマ」という視点が大事です。YouTuberでいう企業案件、テレビでいうパブリシティ枠を想像すると分かりやすいのですが、どこかのポジションに寄った宣伝色の強い動画コンテンツっておもしろくないんですよね。
・ライブ感
・興味をひく客観的なテーマ
・魅力的な登壇者
この2つのウェビナーを見てわかるように、「動画ではなくライブであるという意味」「客観的なテーマ設定」「魅力的な登壇者」。この3つが網羅されると、今しか見られないプレミア感という価値が出来上がります。
よって多くの視聴者の時間を確保できるようになるという図式ですね。ライブ感を演出することを考えると、コンテンツの構成はディスカッションや対談形式が基本形になるのかなと思っています。
集客にも貢献する「ディスカッション形式」
上述のようなディスカッション形式の座組みの場合、申し込みで得られたリードデータは大体、参加各社でシェアになります。
なので集客も協賛各社にもお願いできますので、1社開催でやるより、当然集客力が上がるんですよね。4社共催だとしたら4社分のリードDBに対してウェビナーの告知がかけられますから、まずその時点で強力ですよね。
しかもプラスして、こういうイベントで集めた登壇者はSNS上でもインフルエンサーである事が多いので、SNS上でのいわゆるバズりも計算できるようになってきます。集客の観点で考えても、ウェビナーは広告ではなく、広報的な目線を大事にしたほうが良いと思います。
企画で集客する。そこから派生する集客チャネルをフル活用する。となると、広告宣伝費をかけないオーガニック施策だけでも集客は設計できますよね。
自社のマーケティングメリットは?
集客が計算できるようになったら、次に考えないといけないのは自社のメリットですよね。客観的なテーマに寄せていけば寄せていくほど、自社のアピールからは遠ざかっていきますから。
でも私はそれで良いと思っています。一見マーケティングチャネルとして機能しないように見えますが、ウェビナー開催後のフォローで営業は頑張ればいいと割り切ればいいと思います。
というより、マーケティングと営業の間をつくるというか、フォローには少し手数をかける意識みたいなのが大事です。
視聴者の温度感で考えてみると、リードスコアリングの高さは自然検索→広告→展示会→セミナー→ウェビナーくらいの順番です。ウェビナーの視聴者は何か具体的なソリューションや製品を探しにきている層ではないという事は前提においておいたほうが良くて、そう考えると、フォローのインサイドセールスでも、「サクッと今の課題感聞かせてくれませんか?」とか、「登壇者も同席させるので15分くらいお話ししませんか?」みたいなライトなアポイントを一度取りにいくのはとても効果的だと思います。
(画像作成:高井伸)
オンラインの場合は浅く広く、コミュニケーションに手数をかけられるので、その長所を利用してホットリードになるまでオンライン主体でフォローしていけば良いと思います。
ウェビナーからもっと具体的に案件化させたい場合は?
そのためにはウェビナーで話すテーマで、そのまま解決できるソリューションをピンポイントに用意しておく事だと思います。事業レベルからアジャストさせるというやり方ですね。
例えば、「2020年4月 ゲームチェンジした世界でインサイドセールスは営業を変えるか?」というウェビナーを開催した時には、同時並行で、ウィズコロナ下で対応する「新型コンサルティングサービス」というプランをウェビナー開催当日に同時リリースしました。
弊社は、CRM/SFA/MA関連のクラウドサービスベンダーですので、コンサルティングはメインの事業ドメインではありませんでしたが、ウェビナーファーストで考えた時にはツールよりも、ノウハウを入り口にしたほうが相性は良いと思います。
B2B企業にとってのウェビナーの重要性
B2Bのマーケティングは、大きく分けて集客と育成の2工程に分けられます。ただ現在はコロナショックによって、リアルのイベントは軒並み中止で、集客工程のオフラインチャネルが全滅してしまっている状況です。
たぶんこの流れは1年くらい続くのではないかなと思っています。これから1年間のイベントすべてのオンライン移行を決定したMicrosoftなど業界の巨人の動きとか、社会の大局を見ると、そう感じざるを得ません。
B2Bの場合、展示会やカンファレンス、セミナーといったリアルなイベントを集客の主力チャネルにしていた会社が8割、9割くらいだったんじゃないかなと思っています。そこがゴッソリ止まってしまうという事のインパクトの大きさは想像できるでしょう。
では、その大きな問題を解消する代替えのマーケティング手段は?
その問題解決の柱がウェビナーなので、ここから1年間B2Bマーケティングの主役になってくる手法だろうと思っています。
ただセミナーやカンファレンスをオンライン化したものがウェビナーか?というと、そうでもないので、どういうマーケティング手法なのかという基礎知識を持っておく必要があると思います。
営業に関しては、緊急事態宣言が解除されて、対面営業の流れは戻ってくるでしょう。
しかしマーケティングに関しては、展示会などのイベントは当面壊滅的でしょう。そう考えると主戦場はオンライン上です。その中でウェビナーの役割は大きなものになるのではないでしょうか。
状況は刻一刻と変化しています。今後もウェビナー周りの動向から目が離せません。
Profile
高井 伸(たかい・しん)
株式会社インターパーク取締役COO。起業家として2009年より活動し、多くのプロダクトを立ち上げ、現在手がけるB2B向けのクラウドサービス「サスケ」は導入企業を1,500社まで拡大した。2015年にインターパークに出資を行い経営に参画している。
note:https://note.com/shintakai
Twitter:@ttttttakai