P&Gで多くの有名ブランドを手掛けて執行役員となり、転職先のFacebook Japanでも同様に執行役員として活躍する中村淳一さん。
このほど中村さんにお会いして、成長の原動力となった学びの量や幅広さ、意欲、熱意をお聞きし、圧倒されました。
これからの時代を生きるための若手マーケターへのアドバイスについても納得感が深く、モチベーションを刺激される内容です。
今回は、Facebook Japan執行役員 マーケティングサイエンス ノースイーストアジア統括・中村淳一さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、写真:海保 竜平)
目次
まだ成長途上。80歳になっても「グロース」を
――まず、これまでのキャリアから教えてください。
新卒でP&Gに入社して、15年ほど働いた後、今のFacebook Japan(Meta日本法人)に移って5年くらいになります。20年以上働いていますが、実はまだ2社目です。
ただ、仕事の内容は約3年周期で変わっています。最初の3年が衣料用洗剤や柔軟剤のカテゴリで、「ボールド」や「レノア」のローンチを担当しました。その後、「パンテーン」や「ヴィダルサスーン」「h&s」などのあるヘアケアで、ブランドやカテゴリーポートフォリオ担当を経て、マネージャーに昇進。小売との共同プロジェクトに携わりながら、営業戦略やカスタマー戦略を担当した後、シンガポールに渡りました。シンガポールでは、中国の担当もしていて、アリババさんやテンセントさんの話を聞きながら、ビッグデータを連携して分析し、ビジネスに役立つインサイト作りに注力しました。
その後、帰国して執行役を経験し、Facebook Japanに転職。当初は日本だけでしたが、2年ほど経った頃から韓国のビジネスも担当しています。現在はそこにプラスして、アジア全体におけるプライバシーファーストのデータドリブンマーケティング実現に取り組んでいます。
――自分の成長を感じたり転機になったりしたエピソードはありますか。
私はキャリアではなく「グロース」、つまり自分の成長を基軸として考えています。時間を横軸、成長を縦軸としたグラフが常に頭の中にあり、そのカーブの伸びや角度を意識しながら仕事をしてきました。
新入社員の頃はカーブの角度が急で、一気に成長していきます。しかし、年数の経過につれて学びが減ってくると、カーブの角度が緩くなってくるのを感じます。そんな「コンフォートゾーン」に入ったと感じた瞬間に、「このまま同じようなことを繰り返していても、成長スピードが遅くなってしまう」と危機感を覚えて、一歩外に踏み出すようにしています。衣料用洗剤や柔軟剤からヘアケアの担当に変わったときも、入社から3年が経過して、成長スピードの減速を感じたからです。
その姿勢や考え方は今も変わらず、最近では今年4月から、仕事は続けながらも、京都芸術大学の大学院でデザイン思考と日本の伝統文化を学んでいます。
――頭ではわかっていても、実際にコンフォートゾーンに入ったら、なかなか抜け出せない人も多いと思います。もしかすると「常に成長していないと怖い」という感覚があるのですか。
それは良い質問ですね…確かに成長しないと自分の価値が低くなると思っているかもしれないです。
――追い抜かれるような恐怖心ですか。
それもあるかもしれません。自分も成長途上ですし、優秀な若手が大勢いますから、その人たちから学ぶことは多いと感じます。
――何歳なっても「グロース」を意識する、と。
はい、70歳、80歳になっても成長したいと思います。先日、お会いした脳科学の先生が「脳が退化していくから勉強できなくなるのではなく、勉強をやめると脳に刺激がなくなって退化する」とおっしゃっていました。だから勉強を続けていれば、脳は年齢に関係なく、成長していくのだと思います。そんな感覚かもしれないです。
私の中でルールはシンプルです。常に「グロース」し続ける。コンフォートゾーンに入ったと感じたら、社内外を問わず、一歩でいいから外に出る。外に出るときは、機会を与えられるのを待たず、プロアクティブに動いて新しいプロジェクトを自ら作りだし、自分が成長できる環境に持っていく――そんなふうに考えています。
成功と失敗ではなく、成功と「学び」
――そんな中村さんでも、失敗した経験はありますか。
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