Instagram責任者のアダム・モッセーリ氏が2022年1月5日(米国時間)にフィードを「Home」「Following」「Favorites」の3種類に切り替えられる機能を実装予定であると発表し、注目を集めています。すでに日本国内の一部アカウントでも試験的に実装が行われているようです。
株式会社FinT代表取締役 大槻祐依さんがInstagramの注目トピックをわかりやすくお伝えする連載第6回は、「新しい3種類のフィード」について取り上げます。3種類のフィードに切り替え可能になった際、企業アカウントはどのような対応が必要なのか、お話しいただきました。
(構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美)
目次
Instagramのフィードが3種類で切り替え可能に
フィードの表示が「Home」「Following」「Favorites」の3種類で切り替え可能になると発表されてから約1カ月経過した2月2日、ついに一部アカウントで実装されているのを観測しました。実装されると、ホーム画面のストーリーズが並んでいる上部分(Instagramと記載されている辺り)に切り替え用のメニューが表示されます。全てのアカウントでの実装は2022年上半期中と言われており、2月現在はランダムにアカウントが選ばれ、テストが行われている段階のようです。
Testing Feed Changes 👀
We’re starting to test the ability to switch between three different views on your home screen (two of which would give you the option to see posts in chronological order):
– Home
– Favorites
– FollowingWe hope to launch these soon. More to come. ✌🏼 pic.twitter.com/9zvB85aPSp
— Adam Mosseri (@mosseri) January 5, 2022
▲アダム・モッセーリ氏の動画の中に、変更後のUIのイメージが出てきます。
「Home」「Following」「Favorites」の3つの特徴は次の通りです。
- Home:現状のフィードと同様に、アルゴリズムによるランク付けで投稿が表示される
- Following:フォローしているアカウントの投稿が時系列で並ぶ
- Favorites:フォローしているアカウントのうち、お気に入りの投稿のみが表示される
Twitterを利用している方には、「Home」はトップツイート、「Following」は最新ツイート、「Favorites」はリスト機能に近いものと例えるとわかりやすいかもしれません。
今回の変更は、アルゴリズムの不透明性や子供への悪影響などについてInstagramがアメリカで批判されていることに対するアクションと見られています。2021年12月に行われた米連邦議会上院小委員会の公聴会で、アダム・モッセーリ氏はフィードを時系列表示に戻す可能性があると話していたのです。とはいえ、アルゴリズムによる表示を便利だと感じているユーザーも一定数います。そうした背景を受けて、ユーザー自らが選択できるよう選択式が導入されることになったのだと思います。
なお、今回のように選択式を導入するケースはInstagramでは珍しくなく、以前は「いいね!」数の表示・非表示が選択式に変更になっています。いずれの場合もInstagramは、ユーザーに機能を体験して慣れてもらった後で、選択できるようにしています。
「Home」「Following」「Favorites」それぞれのポイント
フィードを3種類で切り替えられるようになった後も、企業アカウントの基本的な対策はこれまでとそれほど変わりません。「Home」「Following」「Favorites」でそれぞれ投稿がどのように表示されるのかを考慮し、フォロワーと向き合うことが大切です。そのうえで、「Home」「Following」「Favorites」それぞれで意識したほうが良いことをお伝えします。
Home
「Home」ではこれまでと同様、投稿のエンゲージメントを高め、アルゴリズムによっていかに上に表示させられるかが重要です。最近は特に「いいね!」の数の多さがホームのインプレッション数と相関性が高いと考えています。ホームのインプレッション数を伸ばし、できるだけ多くのフォロワーに投稿を見てもらうには、「いいね!」の数を増やす必要があるのです。
「いいね!」の数とホームのインプレッション数の相関性について、FinTが運営するInstagramアカウント「Sucle(シュクレ)」の例をご紹介します。次の2つの投稿はどちらもリーチ数は約1,000,000でしたが、「いいね!」の数とホームのインプレッション数に違いがありました。「いいね!」の数が2分の1の投稿では、ホームのインプレッション数も2分の1以下になっていたのです。
・全国キャラクタースポット7選
画像出典:https://www.instagram.com/p/CWngApUBny1/
「いいね!」約20,000
ホームのインプレッション数 約500,000
・予算別誕生日プレゼントリスト
画像出典:https://www.instagram.com/p/CXDrBtBvXo1/
「いいね!」約10,000
ホームのインプレッション数 約200,000
中には「投稿の指標は『保存』も重要なのではないか?」と考える方もいるでしょう。確かに保存数も重要ではありますが、「保存」はどちらかと言えば便利な情報や役立つ投稿に対する反応であることが多く、リーチ数に影響する指標です。保存数が伸びるとリーチ数が伸びます。
上記の例のような数値の相関性は、Sucle以外にFinTのクライアント企業のアカウントでも見られています。ユーザーが投稿に「いいね!」をするということは、それだけその投稿やアカウントに好感を抱いており、エンゲージメントが高いと考えられるので、投稿のホームインプレッション数に課題があるときは「いいね!」の数が足りないと考え、仮説検証を行います。
イラスト:Marketing Native編集部
Following
現状のフィードは投稿のエンゲージメントを高めることが重要なので、投稿時間による仮説検証は基本的に不要とFinTではクライアント企業にお話ししています。しかし、「Following」が実装されたら、アカウントによっては仮説検証が必要になるでしょう。例えば、フォロワーのライフサイクルがある程度決まっており、アクティブな時間帯が限定されているアカウントなどの場合です。
時系列表示を意識する場合は、フォロワーがInstagramを開く少し前を狙って投稿します。Instagramのインサイトの「オーディエンス」に表示されるフォロワーのアクティブな時間帯はもちろん、フォロワーのライフサイクルも考慮し、仮説検証を行うと良いでしょう。フォロワーが主婦ならお昼や夕方、夜、学生なら通学時間の朝や夜といった具合です。
また、フォロワーが自社アカウントと一緒にフォローしているアカウントの投稿時間をチェックし、同じタイミングで投稿するのを避けるようにすることも大切です。
Favorites
フォロワーが自社アカウントを「Favorites」に登録しているか否かは、おそらく把握できません。しかし、フォロワーのファン化・コミュニティ化を促進したいと考えている方は、「Favorites」を意識して運用すると良いでしょう。
「Favorites」に登録してもらうには、フォロワーに「もっと投稿を見たい」と思ってもらうことが重要です。投稿の数値データを踏まえ、ユーザーが必要とする情報を突き詰めることが求められます。また、複数枚の画像でフィード投稿を行う際に、最後の画像で「お気に入りに登録してね」と訴求するのも良いでしょう。
注意したいのは、人気のない投稿をできるだけ減らすことです。現状のフィードでは、アルゴリズムによって伸びる投稿とそうでない投稿のインプレッション数に顕著な差があり、人気がないとほとんど見られません。しかし、「Favorites」では人気のない投稿も関係なくフォロワーに表示されます。そのため、フォロワーが興味のない投稿を続けてしまうと、「Favorites」から除外されたり、フォローを外されたりするおそれがあります。
施策に優先順位を設け、対応を
「Home」「Following」「Favorites」の3種類のフィードが実装されると、やるべきことが複雑になり、「混乱しそう」と思う方がいるかもしれません。しかし、すべての種類のフィードで満遍なく見られるようにする必要はなく、注力すべきポイントを絞っても問題ありません。例えば、インプレッション数を伸ばしたい場合は、アルゴリズム上でなるべく上位に表示されるよう対策し、フォロワーのファン化を目標とする場合は、フォロワーが求める投稿内容と向き合うのが良いでしょう。アカウントのフェーズや目標に応じて、施策に優先順位を設けてみてください。
【Profile】
大槻 祐依(おおつき・ゆい)
株式会社FinT代表取締役。
1995年生まれ。早稲田大学在学中の2017年3月にFinTを学生起業。「世界をまるごとハッピーに」というビジョンのもと、Sucle(シュクレ)という若年層女性向けSNSメディア(総合70万フォロワー)やSNSマーケティング事業を展開。主要事業であるInstagram運用代行にて、大手企業を中心に累計100以上のアカウントを企画、撮影から投稿までサポートしている。日経ビジネスやマネー現代、DIAMOND SIGNAL(ダイヤモンド・シグナル)などの媒体に、SNSマーケティングの最新傾向やSNSのユーザーインサイトに関する記事を多数寄稿している。
株式会社FinT:https://fint.co.jp/