DuckDuckGo(ダックダックゴー) は個人情報の収集を一切行わず、プライベートブラウジングモードでも行動の追跡を行わない検索エンジンです。2008年に設立された後、2013年以降に利用者数が増加し、1日の検索クエリ数の平均値は2020年3月時点で5,600万件を超え、2022年1月時点で1億件以上となっています。具体的にどのような機能があり、Google(グーグル)を利用した際の検索結果とどう異なるのでしょうか。
今回はDuckDuckGoについて、設定方法やGoogleとの比較などをご紹介します。
目次
検索エンジン「DuckDuckGo」とは?
ダックダックゴーがどのような検索エンジンなのか、仕組みや特徴をお伝えします。
プライバシーを守る検索エンジン「DuckDuckGo」
GoogleやYahoo!、Bingなどの検索エンジンはユーザーの検索内容、閲覧履歴といったデータを保存し、それぞれに適した情報を提供しています。自身にとって最適な検索結果が表示され、ユーザビリティが向上する一方で、「何を検索したのか」「どんなサイトを閲覧しているのか」といった個人情報が蓄積されていることに不安を覚える人もいるでしょう。
2013年、アメリカ国家安全保障局(NSA)が「PRISM」と呼ばれるシステムなどを利用し、インターネット上の個人情報を収集していることが発覚しました。この事件を契機に、注目を集めるようになったのがDuckDuckGoです。DuckDuckGoは、ユーザーのプライバシーを保護するため、データの保存や収集を一切行いません。検索結果がパーソナライズ化されないため、フィルターバブル(※1)に陥るおそれがないとも言われています。
匿名で通信できるシステムと知られているTor(The Onion Router ※2)でも、デフォルトの設定はDuckDuckGoの検索結果が利用されています。
※1 フィルターバブル:検索エンジンやSNSを通じて得られる情報がアルゴリズムによってパーソナライズ化され、多様な情報やその人が好まない意見などに触れる機会が失われている状態のこと。DuckDuckGoはフィルターバブルの問題に関し、Google検索についての調査結果を2018年に発表している。
※2 Tor:暗号化の層を玉ねぎの皮のように何重にも重ねることで、オリジナルデータを覆い隠し、匿名で通信できるようにしているシステム。
Tor Browser 6.0 is released Tor Blog
DuckDuckGoの仕組み
DuckDuckGoはGoogleのAPIを使用していません。検索順位には多数の要因が関係しており、頻繁に変更されていますが、公式サイトには「評価の高いサイトからの被リンク獲得が重要」という旨が記載されています。
DuckDuckGoの特徴
- シンプルなレイアウトを採用。
- 検索メニューが色々ある。
- 可能な限り、暗号化された接続を使用する。
- 検索履歴が表示されない。
- 広告にターゲティングもリターゲティングもされない。
- 検索結果画面は無限スクロールを採用。
- サイトの信頼度が確認できる。
- セーフサーチ機能がある。
DuckDuckGoはシンプルなレイアウトで構成されています。Googleなどと比較するとタイトルの表示文字数が少なく、検索結果を見ただけではページの内容がわかりにくい場合があります。
検索メニューはWeb、画像、動画、ニュースなどです。キーワードによっては、その他のメニューが表示されることもあります。
▲「ファンデーション」を検索すると、「意味」というメニューが出てきた。
▲「iPhone」で検索すると、「マップ」メニューが出現。マップをクリックすると、近くでiPhoneを購入できる店が地図上に表示された。
DuckDuckGo最大の特徴は、広告にターゲティングもリターゲティングもされないという点です。検索履歴を保存しないため、広告に追いかけられることがありません。
DuckDuckGoを既定ブラウザにする方法
DuckDuckGoを既定ブラウザに設定するには、どのようにすれば良いのでしょうか。Internet Explorer、Google Chrome、 Safariを例に取り上げてご紹介します。
Internet Explorerの場合
- DuckDuckGoのWebサイト にアクセスした後、「IEにDuckDuckGoを追加」または「DuckDuckGoをインストール」をクリック。
- 設定画面が開かれるので、説明手順に従って設定を進める。
- 「DuckDuckGoを検索エンジンに追加する」を選択する。
- ホップアップにて追加ボタンをクリックする。
- 画面右上のツールアイコンから「アドオンの管理」をクリックする。
- 検索プロバイダーからDuckDuckGoを選択し、「既定に設定」をクリックし、設定完了。
なお、Bingなど元の検索エンジンに戻したい場合はInternet Explorerの検索窓の▼ボタンから使用したい検索エンジンを指定します。または、上記「5」以降の手順で、既定にしたいブラウザを選択し直しましょう。
Google Chromeの場合
- DuckDuckGoのWebサイトを開き、「ChromeにDuckDuckGoを追加」をクリック。
- 表示された画面の「Chromeに追加」をクリックし、「拡張機能を追加」を選択する。
- DuckDuckGoが検索エンジンのデフォルトとして設定されるほか、サイト訪問時に拡張機能アイコン(ジグソーパズルのマーク)をクリックすると、PRIVACY GRADEが表示されるようになる。
検索エンジンをGoogleなどに戻す際は、「検索エンジンの管理」から希望の検索エンジンを設定します。
- Google Chromeの設定から「検索エンジンの管理」をクリック。
- 既定ブラウザとして設定されているDuckDuckGoを「無効にする」をクリックし、デフォルトにしたい検索エンジンのメニューから「デフォルトに設定」を選択する。もしくは、デフォルトにしたい検索エンジンを「デフォルトに設定」すると、DuckDuckGoが規定ブラウザから外れる。
iPhone Safariの場合
- iPhoneの設定から「Safari」を選択する。
- 「検索エンジン」を選択すると、設定可能な検索エンジンが一覧で表示される。
- DuckDuckGoを選択するとデフォルトに設定される。
・iPhone SafariでのDuckDuckGoの基本的な使い方
- Safariを立ち上げ、検索窓に調べたいキーワードを入力する。
- 検索結果が表示される。
画像:検索したキーワードに関連する画像が表示される
動画:検索したキーワードに関連する動画が表示される
ニュース:検索したキーワードに関連するニュースが表示される
マップ:「赤坂 ランチ」と検索した場合、赤坂付近の地図と飲食店が表示される - 地域や期間を絞り込んだり、セーフサーチを厳重にしたりすることもできる(設定アイコンからも変更可能)。
言語の変え方(日本語化)
日本語に適した検索結果が表示されるようにするには、適当なキーワードで検索し、検索窓の横にある設定アイコンから「一般の言語」を選択します。言語は「日本語(日本)」を選択すると、自動的に日本語表記になります。
日本語に適した検索結果の表示の仕方
検索窓の横にある設定アイコンから「すべての設定」を選択し、「一般」のタブで地域を「Japan」に設定し、「保存して終了」をクリックします。
DuckDuckGoとGoogleの違い
プライバシーが保護される以外に、DuckDuckGoとGoogleではどのような違いがあるのでしょうか。検索機能と検索結果の違いからDuckDuckGoとGoogleを比較していきます。
検索機能はどこが異なるか?
SERPs
DuckDuckGoのSERPsには各検索結果の日付が表示されません。また、位置情報により基本的には検索結果がパーソナライズ化されない点もGoogle検索と異なります。
SNS検索機能
DuckDuckGoでSNSのユーザーIDを検索すると、検索結果上で該当するソーシャルプロフィールが表示されます。
!(bang)機能
bang機能とはDuckDuckGoで直接サイト内検索を行える機能です。1万以上のWebサイトから目的のサイトを選択することができます。bang機能に関するページでEntertainmentやMultimedia、Newsなど主要カテゴリーを選択し、さらにその中の細かいカテゴリーを選ぶと、対象サイト一覧が表示されます。目的のサイトを選択し、検索キーワードを打ち込むとサイト内検索が行えます。
このbang機能を使えば、DuckDuckGoで検索履歴を残さず、Googleの検索結果を表示することも可能です。
GoogleやWikipedia、Amazonなどの主要サイトであれば、検索窓に直接「!」と入力して利用する方法もあります。
GoogleとDuckDuckGoで検索結果はどれくらい異なるか?
地域系キーワード
「六本木 ランチ」を検索し、違いを比べてみます。
・Googleの場合
※検索結果は2020年3月30日時点のものです。
マップを使い、六本木周辺のお店を視覚的に表示してくれます。また、マップの後に通常の検索結果が表示されます。
・DuckDuckGoの場合
※検索結果は2020年3月30日時点のものです。
マップなどの表示はなく、テキストによる検索結果が表示されます。Googleと違ってファビコンがURLとともに表示され、視覚的にサイトを判別しやすいです。
さらに検索キーワードの範囲を広げて比較してみます。キーワードは場所の指定をなくし、「ランチ」で検索します。
・Googleの場合
「六本木 ランチ」と同様にオフィス近くの店舗が表示されました。続いて、スクロールすると港区のランチまとめ記事が表示されました。Googleでは場所に関するキーワードを入力しなくても、IPアドレスやデバイスの位置情報、過去の検索履歴に基づいて、近隣のランチの情報が表示されます。
※検索結果は2020年3月30日時点のものです。
・DuckDuckGoの場合
※検索結果は2020年3月30日時点のものです。
食べログや一休など、グルメサイトのランチカテゴリーページが表示されました。
全国のランチに関する情報がSERPssに表示されます。Googleとは対象的に、場所を特定した、結果は表示されませんでした。
ニュースや時事系のキーワード
次に、「タイ 洞窟 事故」で検索し、違いを比べてみました。
・Googleの場合
※検索結果は2018年7月20日時点のものです。
Googleで時事的に旬となっているキーワードを検索すると、関連するトップニュースが上部に表示されます。記事が公開された日付も記載されており、最新のニュースをキャッチアップしやすいと言えます。トップニュースの下には通常の検索結果が表示されます。ディスクリプションで記事内容を確認でき、目的の記事を探しやすいです。
※検索結果は2018年7月20日時点のものです。
・DuckDuckGoの場合
DuckDuckGoは、テキストの検索結果のみが表示されます。また、検索結果に表示される記事を見てみると、特に時系列にはなっていないことがわかります。このとき1位に表示されていた記事は7月7日のものであったのに対し、4位に表示されている記事は7月11日のものでした。
※検索結果は2018年7月20日時点のものです。
レシピ系キーワード
最後に「冷やし担々麺 レシピ」で検索した場合の違いを比べてみましょう。
・Googleの場合
※検索結果は2018年7月20日時点のものです。
レシピの画像が検索結果とともに表示され、記事を見なくても料理をイメージしやすくなっています。
・DuckDuckGoの場合
※検索結果は2018年7月20日時点のものです。
DuckDuckGoの検索結果にはシンプルなテキストのみが表示されます。
セキュアな検索に対する需要の高まり
近年、インターネット上のプライバシーポリシーへの関心が高まり、DuckDuckGo以外にもプライバシーを保護する検索エンジンが提供されています。
GDPRの施行に伴う、プライバシーポリシー見直しの動き
2018年は、Facebookなど多数の企業にプライバシーポリシーを見直す動きがありました。この動きの背景には、EUにおける「GDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)」の施行があります。GDPRはEU住民の個人情報を保護するための新しいルールです。EUに住んでいる人の個人情報を処理するときなどに順守する必要があります。「削除権(忘れられる権利)」や「データポータビリティ権」など、さまざまな権利が規定されており、多くの企業が対応を求められました。
また、上記の動きに加え、Facebookによる個人情報の漏洩も問題になったため、今後もユーザーの間でセキュアな検索へのニーズは高まることが予想されます。
プライバシーを保護する検索エンジン
DuckDuckGo以外にも、プライバシーを保護する検索エンジンは多数登場しています。
Brave
MozillaCorporationの前CEOであるブレンダン・アイク氏が開発したブラウザです。広告ブロック機能を搭載し、ユーザーのプライバシーを重視した設計がなされています。Brave Paymentと呼ばれる機能で、特定のWebサイトの運営者に匿名でデジタル通貨を送金することも可能です。Google Chromeよりもページの読み込み速度が速いといわれています。
Epic Privacy Browser
アメリカとインドに拠点を置く、Hidden Reflexが提供しているブラウザです。常にプライベートブラウジングモードになっているため、Epicを閉じると、ブラウジングデータが削除されます。広告やCookieをブロックするなど、さまざまな機能でユーザーのプライバシーを守ります。
HTTPS Everywhere
The Tor ProjectとElectronic Frontier Foundationが共同で制作した、FirefoxとChrome、Operaの拡張機能です。HTTPとHTTPSの両方を利用しているWebサイトを閲覧するときに、自動的にHTTPSで通信してくれるため、気づかないうちにHTTPでWebサイトに接続するのを防ぐことができます。
今後のプライバシー保護の動きに注目
DuckDuckGoは日本語にも対応しており、シンプルに使いやすい検索エンジンです。モバイル向けのアプリも提供されているので、スマートフォンなどでも利用することができます。
インターネットにおけるプライバシー保護に関する動きはますます加速することが予想されます。GoogleもChromeでサードパーティCookieの利用を段階的に規制することを発表しています。DuckDuckGoを利用するユーザーもこれまで以上に増加する可能性があり、今後の動きから目が離せません。
なお、Googleの検索エンジンの仕組みについては以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
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