東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、全国各地で地域活性化やビジネス創出を支援する株式会社さとゆめと共同出資会社「沿線まるごと株式会社」を設立することを発表した。
JR東日本八王子支社とさとゆめが取り組んできた沿線活性化事業「沿線まるごとホテル」の本格的な事業展開に伴うもので、JR青梅線にある無人駅「鳩ノ巣駅」の改修・整備や、「沿線まるごとホテル」の宿泊プランを試験的に販売する実験ツアーの実施などが予定されている。
目次
「沿線まるごとホテル」事業とは
JR東日本の駅舎や鉄道施設などを「ホテルのフロント」として活用し、沿線集落の古民家(空き家)を「ホテルの客室」に改修、さらには地域住民とともに接客・運営(ホテルのキャスト)を行うことで、「沿線まるごとホテル」の世界観を構築し、新たな滞在型観光、マイクロツーリズムの創出を図る取り組み。
2021年2月~4月に実証実験として、「1つの鉄道(青梅線)、2つの駅(白丸駅、奥多摩駅)、3つの集落(奥多摩町白丸集落・境集落、小菅村中組集落)」を楽しむ体験・宿泊プラン「無人駅からはじまる、源流への旅」を実施。1泊2食・体験付き1人2万9700円で販売したところ完売となり、利用客からの評価も高かったため、事業化に向けて本格始動することとなった。
会社設立の背景と目的
JR東日本グループでは、生活者の多様なニーズに合わせたサービスを提供し、駅や駅周辺の魅力と価値の向上に取り組んでいる。一方で、地方都市や農山漁村では過疎化が顕著となっており、JR東日本グループとしても沿線の生産年齢人口減やコロナ禍による地域への送客量減の課題に直面している。
こうした背景のもと、「沿線まるごと株式会社」は、アフターコロナにおける新たな旅と暮らしの実現、地方創生人財の育成、地域マーケット・課題を捉えたスピーディーな地域事業運営と展開拡大を行うことを目的として設立された。
今後の予定 – “ヒト”起点での地域活性事業サービスを展開
地域活性事業を実施していくうえで、数年単位ではなく、10年以上先を見据えて地域に寄り添える「ヒトづくり」から着手していくことが重要との考えで、地域住民をはじめ、JR社員とさとゆめ社員が伴走していく“ヒト”起点の事業モデルを展開していくとのこと。
JR青梅線無人駅の観光拠点化
JR青梅線沿線で「沿線まるごとホテル」の事業立ち上げ・運営を継続していくうえで、JR青梅線無人駅の「鳩ノ巣駅」を観光拠点として改修・整備する。古民家ホテル利用がある宿泊者向けのチェックインスペースや、JR青梅線沿線の集落ホッピング起点・情報発信・交流拠点としても活用する。
「沿線まるごとホテル」ツアーの販売を順次実施
「沿線まるごとホテル」の宿泊プランを試験的に販売する実験ツアーを、2021年2月~4月とは異なる時期と集落で実施する。“集落ホッピング”、”青梅線駅チェックイン“などのメニューの開発実施、また3コース程度の“沿線ガストロノミー”コースメニューの開発実施などが検討されており、生産現場の見学や多摩の食材を使ったディナーなどを楽しむハイグレードな内容となる予定。
また、古民家ホテル事業については、JR青梅線沿線にて2022年度内に古民家(空き家)を改修し、2023年に古民家ホテルとして宿泊事業サービスを開始する。その後、JR青梅線沿線で順次改修・開業していき、2026年には全5~8棟で宿泊事業を稼働するとのこと。
その他、地域課題解決・地方創生・SDGsに向けた取り組みと事業も実施される予定。また、「沿線まるごとホテル」等の地域事業を全国へ展開て2040年までに「30地域で事業創出」を目標に掲げ、人材育成にも力を入れる。