facebook twitter hatena pocket 会員登録 会員登録(無料)
ニュース

AIの予測でPOPのデザインも含めた商品棚のシミュレーションが可能に。DNPの「AI売上予測システム」が進化

最終更新日:2024.10.17

メーカーに所属するマーケターの中には、店頭でのマーケティング施策の一つとして、POP制作に関わったことのある方もいるだろう。大日本印刷株式会社(以下:DNP)は、発売前の商品の売上予測シミュレーションや小売店舗でのテストマーケティングなどを支援する「DNPテストマーケティング支援サービス」の機能の一つ、「AI売上予測システム」の精度向上と機能拡充を図るべく、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社(以下:ユニリーバ・ジャパン)と共同で実証実験を実施した。

実証実験の結果を経て、生活者に購入を促す店頭のPOP(Point of Purchase)のデザイン要素(色使いやフォントの大きさ・太さ)など、複数の要素を加味した商品棚づくりのシミュレーションと売上予測が可能になったという。進化した「AI売上予測システム」について、DNPの担当者に競合サービスと比べた優位性や今後の展開について聞いた。

目次

ヘアケア商品を対象に、ユニリーバ・ジャパンと実証実験を実施

DNPは、メーカーの「小売店の店頭での販促施策の効果を予測し、費用対効果を高めたい」というニーズに応えるため、2021年1月より「DNPテストマーケティング支援サービス」を展開している。同支援サービスは、発売前やテストマーケティング中の商品について、実店舗の棚での商品の陳列方法や販促物の設置による売上動向の違いなどを分析し、マーケティング施策の結果を定量的に予測するもの。予測の過程では、AIを活用して施策パターンごとの売上をシミュレーションする「AI売上予測システム」が使われている。

「DNPテストマーケティング支援サービス」を展開する中でDNPは、販促施策の一つとして店頭に設置するPOPに関する「自社製品の売上につながるデザインや設置効果を定量的に把握したい」というメーカーのニーズにも着目。そこで、2021年6月よりユニリーバ・ジャパンと共同で、DNPの協力先であるハシドラッグの店頭にシャンプーやコンディショナーなどのPOPを設置して実証実験を行った。

実証実験では、シャンプーやコンディショナーなど、浴室で使うヘアケア商品(合計34商品)を対象に、複数タイプのPOP(スイング式、棚のレール用のカード、バックボード等)のデザインや設置箇所などによる効果の違いについて、POSデータに基づいて分析した。

その結果、DNPはPI値(※)の上昇に寄与する以下4つの要因を発見したという。

  1. メインコピーのフォントの大きさ
  2. メインコピーのフォントの太さ(「1」よりも売上動向への関与度は低い傾向がある)
  3. 特にプライスカードの全体サイズ
  4. プライスカードの背景色

※ PI(Purchase Index)値 : レジを通過した顧客1000人当たりの購買指数。生活者が商品を支持する度合いを測る指標の一つとして使われる。

実証実験を経て「AI売上予測システム」の機能を拡充

DNPは実証実験の結果を「AI売上予測システム」のAIに学習させ、売上予測精度の向上と機能の拡充を行った。「AI売上予測システム」の新機能のポイントは次の2つだ。

1.店頭でのマーケティング施策の効果の事前シミュレーションが可能に

システム導入企業の商品や競合他社の商品について、店頭での販売価格や棚に置かれる位置(棚割り)、店頭設置の販促物などによる売上の変化をあらかじめAIに学習させた多次元予測モデルを用いてシミュレーションする。発売前の商品の適切な価格やパッケージ、他社商品との競合状況、効果的な販促ツールなど、トータルな施策の効果に関してPI値で予測する。

2.POPのデザインも視野に入れた売上予測が可能に

「AI売上予測システム」に、POPのデザインプランの有無に加え、POPに使用する背景色(ベースカラー)やフォントのサイズ・太さといったデザイン要素が販売動向にどれくらい影響するのか予測を行う機能を組み込んだ。

進化を遂げた「AI予測システム」について、大日本印刷株式会社 ABセンターDX事業開発本部 SPマーケティング事業推進ユニット事業推進部 開発グループ 古積満洋さんに競合サービスはあるのか尋ねた。

「棚割や店頭価格、商品パッケージなどそれぞれ個別で売上や好感度の予測を行うサービスはこれまでもありましたが、販促物の状況変化も含めて総合的に売上の変化を予測するサービスはなかったと認識しています。強いて挙げるとすれば、棚割による売上予測システムが競合となり得るのではないでしょうか」

DNPは、今後は分析用AIの精度の向上やテスト販売の実施環境の拡充に注力するという。さらに、「現時点ではシャンプー / コンディショナーのみに対応するシステムですが、今後は他の商品カテゴリーにも対応できるよう展開していきたい」(古積さん)とのこと。「AI売上予測システム」のさらなる発展に期待したい。

大日本印刷株式会社

週2メルマガ

最新情報がメールで届く

登録

登録