オンラインビジネスコンテストの企画運営やソフトウェア開発を行う株式会社プロッセルは、自社で開発を進めるソフトウェアのβ版を用いて、2022年2月14日にオンライングループワークの利便性を検証する実証実験を行った。この実証実験は、新潟県令和3年度「5Gソリューション開発促進事業費補助金」事業の一環として実施されたもので、教育現場におけるグループワークの教員側の課題にも目を向けている点が興味深い。実証実験実施後、その結果についてプロッセルに話を聞いた。
目次
実証実験の背景と概要
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、経済活動・日常生活ともに急速にDXが進行したものの、未だオンライン特有の課題は存在しており、オフラインの補完的役割にとどまっているのが現状だ。同様の傾向は授業のオンライン化が進んだ教育現場でも見られており、特に生徒同士のグループワークにおいてこの課題は顕著で、一定の制約のもと運営されている。
現状、教育現場にてオンラインでグループワークを行う場合には、以下の課題があると言う。
- オンライン授業での事前準備(学生のレベル・性格に応じたチーム分け、資料作成等)が多く、教員への負担が大きいこと。
- Zoom等でブレイクアウトルームを用いた教員は全学生を満遍なく見られず、状況の把握(進行度合把握、質問への対応、発言頻度の把握等)が困難であること
上記の課題を解決すべく、プロッセルは2020年より5G回線の特徴を生かし、オンライングループワークの課題を解決するソフトウェアを開発している。そして、コンソーシアム(共同事業体)内外の高等教育機関と連携した実証実験を複数回実施することにより、ソフトウェアの改善を目指している。2月14日に行われた実証実験は、その第1弾となる。
日時:2022年2月14日(月)16:00~17:00
場所:独立行政法人国立高等専門学校機構 長岡工業高等専門学校
内容:β版ソフトウェアを用いたグループワークを開催し、完全オンラインで実施。
(時間構成:グループワーク50分、プレゼン10分)
※新型コロナウイルス感染拡大などにより対面実施が困難であるため、オンラインのみで実証実験を実施。
【実証実験のプログラム】
▲5G実証実験全体図(イメージ)
【実証実験に使用したβ版ソフトウェアの概要】
Zoomの利便性・セキュリティ面は維持したまま、グループワーク実施時における教員の負荷を現状より軽減させたソフトウェアを開発。5Gの特徴である「低遅延」と「大容量」を生かし、グループワークの進行と並行してリアルタイムに学生の評価が可能となる機能を実装している。
・グループワークの開催・運営に関する機能
- グループワークに特化したタイムラインやメンバー表などを容易に編集可能にするテンプレート
- メンバー表と連動するブレイクアウトルーム等のビデオ会議
- 上記の情報を一括で管理・閲覧できる管理者ダッシュボード
・リアルタイム解析機能
- 各ブレイクアウトルーム内の会話をテキスト化
- 各チームに対しての感情分析、トピック分析
※感情分析では、グループワーク内容のポジティブ性やネガティブ性を確認することができる。トピック分析では、発言内容のつながりを可視化することができる。
実証実験の結果
実証実験後は、ソフトウェアの使用感について長岡工業高等専門学校の教員・学生らにアンケート調査が行われた。どのような回答が得られたのか、株式会社プロッセル ONCON事業責任者の綱 玄太さんに伺った。
まず、ソフトウェアを使ってグループワークを行った学生からは、回線が重くなってフリーズしてしまう問題はあったものの、使用感について概ね良い評価を得たそうだ。グループワークを行いやすくするために、機能追加に関する意見も調査できたと言う。
また、今回の実証実験で最も重視していた教員からの反響については、肯定的な評価とともに改善点も見つかったようだ。
【評価点】
- 「各グループがどのような話をしているのか、テキストや相関図で可視化されているのが良い。オンラインだとすべてのグループに目を配れないので、良いシステムだと思います」
【改善点】
- 「テキストログ機能はとても良いが、テキストが増えてくると確認しづらいので、発言者ごとに色を付けたり、相関図を発言者ごとに色分けして表示するなどの工夫が必要」
- 「会話ベースのグループワークではなく、付箋やホワイトボードを使用して手を動かす形のものについてはあらためて効果検証が必要」
さらに、実証実験の中で通信速度の確認も実施。オンライングループワークが対面型グループワークに近づくには、「高速大容量」・「低遅延」・「同時多数接続可能」である5G回線の重要性を再認識したと言う。
オンライン上のグループワークは参加者の不便に目が行きがちだが、この事業では運営側である教職員の課題にも着目した点がまず目を引く。また、実証実験において新たに得られた教職員のニーズは、教育現場以外にも応用可能なものになるかもしれない。