転職や新卒採用などでビジネスパーソンの多くが知っているであろうエン・ジャパン。最近では草彅剛さんを起用した「エンゲージ」のCMをテレビやWebでご覧になった方もいるでしょう。
そのエン・ジャパンで執行役員マーケティング本部長を務めるのが、同社に新卒で入社した田中奏真さんです。
挑戦的な取り組みと若手の積極起用で、異動当時7人だったマーケティングの部署を70人まで拡大してきたという田中さん。日頃どのようにマーケティング本部を運営し、組織の拡大を図ってきたのでしょうか。
今回はエン・ジャパン執行役員マーケティング本部長の田中奏真さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:海保 竜平)
目次
エン・ジャパンとの運命的な出合い
――田中さんがどんなキャリアの方か、そこから教えてください。
出身は神戸で、運動は苦手でしたが、勉強は好きでした。それなのに明石高専に入学して電気工学を専攻したら、自分には難しすぎて最下位になってしまったのです。そのまま電気工学の道を進むのは厳しそうなので、違う分野に挑戦しようと思い、一浪して神戸大学経営学部に入学しました。
高専は5年間一貫教育なので、大学には3年生で入学することになります。すると就活の軸などないまま、いきなり就活が始まります。「経営の勉強を始めよう」と思って入学したのに、もう就活。
複数の就活サイトに登録をして、ある日、満員電車で通学していたら、後ろの女性2人組から「最近の就活生って大手の就活サイトしか使っていないよね」という声が聞こえてきました。確かに私も大手の就活サイトを使っていました。そう思っていると、今度は「もっとエンを広めていきたいね」という言葉が聞こえてきました。“エンを広めるって何?”と思った瞬間、エン・ジャパンのロゴが頭に浮かび、よくわからないまま後ろを振り向いて女性たちに「ちょっといいですか。エンを広めるって何ですか?」と声を掛けました。
その女性たちはエン・ジャパン内定者の大学4年生で、内定者アルバイトという形でエン・ジャパンの就活サイトを広めるチラシ配りに行く途中でした。2人の話を聞いて、“自分はエン・ジャパンの就活サイトに登録をしているけど、サイトを運営する仕事もあるのか”と気づき、これも何かの縁だと思って、初めて就活で履歴書を書いたのがエン・ジャパンです。
――運命的ですね。
その後、複数の会社に応募する中で、エン・ジャパンの同期が一番優秀そうに感じたため入社を決めました。
最初は総合職で転職サイトの法人営業としてキャリアをスタートし、IT業界のエンジニア採用の支援を行いました。でも、なかなか成果が出なかった。ただ、それでもIT業界の仕組みに関する学習や求人広告のクリエイティブについては腐らずに勉強していました。
そんな社会人3年目の9月、社内の掲示板で「朝8時から課題図書を読んで、その内容をプレゼンするイベントを毎週行うので、興味のある人は参加を」という発表が出ました。朝早いし、寒いし、眠いし…と抵抗感もあったのですが、それを上回って勉強したいという欲求が強く、エントリーして参加しました。20人くらい参加していたと思います。本は勝間和代さんの『利益の方程式』。自分がプレゼンをする前日、夜中3時まで資料を作って、朝6時に出社し、2時間練習してプレゼンをしたら、それなりに手応えがありました。すると、イベント終了後に営業の上司から呼ばれて「マーケティング本部に異動です」と告げられました。そのイベントの主催者がマーケティング責任者で、適性がありそうな候補者を探していたのです。
――驚きですね。マーケティングの部署へは行きたかったのですか。
マーケティングに興味があるというより、営業で良い成績を上げられていなかったので、心機一転のチャンスと感じました。異動になったのは2009年1月。ただ、その頃はリーマン・ショック(2008年9月)の翌年ですから、広告宣伝費は前年の半分ほどに削減され、それでも成果は同様に上げなければならないという厳しい状況でした。
どうしたものかと考えていると、上司から「年間20億円の広告宣伝費のうち10億円を渡すから、自分で考えて事業をいい感じに成長させてほしい」というオーダーがまるっと来まして…。マーケティング初心者でリスティング広告さえもわからない状態でしたが、自分で調べ、サイトごとにバラバラだった計測ツールをGoogle Analyticsに統一するディレクションをしたり、スマートフォンが人気になるのに合わせてスマホ広告に注力したりしました。2014年にはすがけん(菅原健一)さんが共著に入っている『ザ・アドテクノロジー』を読んでアドテクにハマって成果を上げたらチームリーダーになり、そのままグループマネージャー、部長、執行役員という流れです。
電車の中での声かけや読書会への参加など、積極的にチャレンジすることが私にとっての楽しさになっています。同様に、最初はマネジメントに興味はなかったのですが、マネジメントの仕事もやってみたら楽しさに気づき、やりがいを感じられています。
外部資源の調達で組織を活性化させる狙い
――田中さんが大きく飛躍したような特筆すべき実績はありますか。
2009年にマーケティングの部署に異動したときは、広告代理店に依存していて、仕事も広告プロモーションだけでした。組織も広告代理店依存、かつプロモーション特化型です。しかし事業を成長させる上でそれだけでは不十分と考え、新たに実行することを2つ決めました。1つはインハウスマーケティング。代理店依存ではなく自分たちで運用すること。もう1つは広告だけでなくプロダクトそのものを改善すること。その「インハウスマーケティング」と「プロダクト改善」で成果を出し、組織を大きくできたことが、私がやってよかったと考えていることです。
――プロダクト改善のプロダクトとは何ですか。
自社が運営している求人サイトやアプリのことです。
――それまで広告プロモーションを担当していた部署がプロダクトの改善に口を出せる感じだったのでしょうか。
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