「SEOおたく」としてYouTubeやX(旧Twitter)などでSEOに関する情報発信を行い、人気のLANY代表・竹内渓太さん。
今年(2023年)10月で創業から3年を迎えるにあたり、事業成長の推移や施策の全体像をMarketing Nativeに寄稿していただきました。
LANYは主にSEOのサービスを提供する支援会社ですが、顧客ターゲットに特徴があり、そこにレッドオーシャンの業界で右肩上がりの成長を達成できている要因があるようです。
「SEOおたく」竹内さんの寄稿をぜひご覧ください。
目次
【寄稿】
株式会社LANY(レイニー)代表取締役の竹内(@take_404)と申します。
LANYは、2020年10月に創業したSEOコンサルティングを提供するデジタルマーケティング支援会社です。元々、私がリクルートでSEOを中心とするデジタルマーケティングに携わっていたこともあり、その時の経験を踏まえてより多くの価値あるサービスのSEOを支援するために創業いたしました。
2023年9月現在では、社員数7名の小さな会社ですが、創業からの3年間、右肩上がりで業績を伸ばしてくることができました。
ちなみにSEO以外にも、実は海外のノンアルコールビールの輸入販売も実施していて、来年には自社ブランドの販売を開始する予定です。
▲製造中の自社ブランドのノンアルコールビール
本記事では、20年近くの歴史と多くのプレイヤーが存在するSEOコンサルティング業界というレッドオーシャンに飛び込みつつ、3年間右肩上がりで業績を伸ばしてきた我々が行ってきたことを包み隠さずご紹介します。
具体的な業績の推移や施策の成果などの定量データも公開しますので、少しでも皆様の参考になれば嬉しいです。
LANYの業績の推移
創業から3年間の売上の推移は次の通りです。
- 1期目:6,000万円
- 2期目:1.1億円
- 3期目:2.7億円(着地見込み)
爆発的な成長ではないものの、年々右肩上がりで業績を伸ばすことができています。
社員数の推移は下記です。
- 1期目:3人
- 2期目:3人
- 3期目:7人
3期目の途中までは創業メンバーの3名で事業運営をしてきましたが、更なる成長を目指して直近では社員採用を始めました。
大手企業も多い業界の中で、我々のような小さな新興スタートアップがどのように業績を伸ばしてきたのかをここからはご紹介します。
業績を伸ばすためにやってきたこと
業績を伸ばすためにやってきたことを、Marketing NativeっぽくWho・What・Howのフレームワークでご説明します。
- ターゲット(Who)
- 実施内容(What)
- 実施方法(How)
ターゲット(Who)
LANYのコアターゲットは、「すでに80点のSEOができていて、残りの20点が取れずに困っている企業」です。その周辺に戦略ターゲットとして「SEO対策がまだ80点に到達していない企業」を置いています。
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▼戦略ターゲット
ブランドがマーケティング予算を必ず投下する最も大きな括り
▼コアターゲット
戦略ターゲットの中から更にマーケティング予算を集中するターゲット消費者の括り
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LANYがコアターゲットとしている層は、SEOに精通している担当者が在籍しており、Webサイトとしても完成された状態に近いため、支援会社目線では期待を超えていく難度が非常に高い領域です。
ですので本来は、支援会社がより好んで狙っていく層ではないと思います。
しかしながら、あえてその層をコアターゲットとして、苦しい思いをしながらも、各プロジェクトで成果を出すために必死にもがいてきたことで多くのメリットが得られました。
具体的に得られたメリットは次の3つです。
- 社内に専門性が多く貯まる
- 担当者のレベルアップに繋がる
- お客様がお客様を紹介してくれるようになる
前者2つは、よく人材育成で用いられるフレームワークの「コンフォートゾーン」「ストレッチゾーン」「パニックゾーン」でいう、ストレッチゾーンのプロジェクトに取り組み続けたことで会社もメンバーも成長できた、という内容です。
SEOをこれから始めるようなお客様(まだ80点が取れていないお客様)であれば自分たちが知っていることを提供するだけで成果が出る「コンフォートゾーン」です。
普通ならお客様から同じ金額をいただくのであれば、コンフォートゾーンの案件に取り組むべきと考えるのが事業的には正解な気がしますが、そこをあえてストレッチゾーンにズラしてもがき苦しむことで、我々のような新興企業がレッドオーシャンな市場で立ち上がることができたと思っています。
3つ目に挙げた「お客様がお客様を紹介してくれるようになる」は、下記の図解のようなイメージで、コアターゲットのSEOに詳しいお客様のプロジェクトで成果を出して、良い関係性を築くことができれば、我々の戦略ターゲット(SEOのレベルが80点未満の企業)にも広告宣伝費をかけることなくリーチすることができます。
またこの戦略は、たとえお客様でなかったとしても、コンテンツマーケティングなどでコアターゲットの第一想起になることができれば、その方々が周りの方々にLANYを広めてくれるようになります。
次の実施内容にも通ずるのですが、コアターゲットをどこに絞るかといったマーケティング戦略の基本の「Who」を丁寧に考えたことが、事業成長に繋がりました。
実施内容(What)
LANYが事業成長を目指す上でもっとも注力して取り組んできたのが、コンテンツマーケティングです。
具体的には、次のような内容に取り組んできました。
- ブログ
- メルマガ
- YouTube
- X(Twitter)
- ホワイトペーパー
- ウェビナー
すべてをご説明するとものすごく長文になってしまうため、今回はメルマガとYouTubeに絞ってご紹介いたします。
メルマガ
BtoBマーケティングで鉄板とされるメルマガにも2年近く取り組んできました。
結果としては下記の通りです。
週に2回ずつ「有益な情報、読みたくなる情報を、届ける」をテーマに「Weekly SEO」と呼ばれるお役立ち情報系のメルマガをずっと配信してきております。
正直、メルマガ経由のコンバージョン数などは全く追いかけていないため、直接的な意味での事業成果はどれくらいあるかわかりません。
ただ、商談時に「いつもメルマガ読んでます」と言ってくださるお客様も多数存在し、メルマガで接触し続けたことで、SEOコンサルティングの第一想起が獲得できたケースも多いと予想しています。
マーケター森岡(毅)さんの書籍を読んだことがある方はご存知かもしれませんが、選ばれるサービスやプロダクトになるには、消費者のEvoked Set(想起集合)に入り、その中でも第一想起(一番に思い出してもらえるポジション)となることが極めて重要です。
LANYとしては、「SEOコンサルティングといえば?」のEvoked Setに入ることを重要視しており、その中でも第一想起を目指して各種マーケティング活動を行っています。
見込み客のEvoked Setの中に入り、第一想起を獲得するための施策として、メルマガが非常に有効だったのが肌感覚としての一番の学びです。
メルマガを通して高頻度で好意度の高い情報に接触し続けてもらうことで、「SEOといえば、LANY」の想起を醸成して、SEOに困った時に声をかけてもらえる企業に近づけたのがよかったです。
YouTube
LANYは、3年間で100本程度のYouTube動画を公開してきました。
その結果が、下記の通りです。
YouTubeのおかげで「売上」や「採用」に繋がったものを事業成果とすると、メルマガ同様に正確な計測こそできないものの、かなり大きいと自負しています。
特に、YouTubeが売上にもたらした貢献度はかなり高いです。
LANYにお問い合わせしてくださるお客様と商談をすると、「いつもYouTubeを見てます」「YouTubeを見てお問い合わせしました」と言ってくださる方も多くなりました。
お問い合わせ数の拡大に繋がったのはもちろんなのですが、もう一歩踏み込むと「これまでリーチできていなかった層」からお問い合わせをいただく機会が増えました。
コンテンツマーケティングの施策ごとに、リーチできる層はかなり異なると考えており、我々の場合には下記のようなイメージで捉えています。
テキスト消費を好むXや検索(≒ ブログ)に存在する層と、映像や音声での消費を好むYouTubeに存在する層はズレています。
よって、YouTubeに取り組むことでこれまでリーチすることができなかった潜在層(下記の図の青い部分)に新しくリーチすることができました。
複数のチャネルで情報発信をすることで、より多くの見込み客にリーチすることができ、自ずと我々のコアターゲット以外の領域にも波及していったのが狙ってはいなかったものの事業を大きく推進させることに繋がったと思っています。
次に、メルマガやYouTube施策を含めて、我々が3年間で学んだことを踏まえて、どのように施策を動かしてきたのかをお伝えします。
実施方法(How)
事業成長の過程で各種施策を実施する際に、我々が意識してきたこと(振り返ってみて重要だったと思っていること)をご紹介します。
- 正しいことを、速く、大量に実行することが重要
- 定量データでは測れない行間にこそ、本当に大切なものは存在する
それぞれ紹介します。
正しいことを、速く、大量に実行することが重要
何事においても、正しいことを、速く、大量に実行することが重要であるというカルチャーを我々は持っています。
たとえば、コンテンツマーケティングであれば、見込み客が欲している情報を、どこよりも速く、大量に提供することが重要です。
正しいこと(見込み客が欲している情報)を見極めるには、定量・定性の両観点からお客様の反応を日々チェックすることが重要になります。
その正しいことさえわかれば、あとは「速く」「大量に」提供するだけなので、それが達成できる仕組みや体制を構築します。
たとえば、LANYでは一つのコンテンツを複数媒体で発信するための仕組みや体制があります。
▲コンテンツ配信の仕組み
▲コンテンツ制作の体制。
LANYには、BizOpsと呼ばれる業務改善チームがあり、そのチームが専門性の必要ない業務の効率化や仕組み化・標準化を行っています。
BizOpsチームがあることで、コンテンツマーケティングであれば、専門性のある担当者はコンテンツの中身だけを作成すればよくなり、細かい入稿業務や配信設定などの雑多な業務を切り出すことができます。
そうすることで、専門性のある担当者がエッセンスとなる部分にだけリソースを割くことができるようになり、最終的には発信できるコンテンツの量が大きく増えました。
正しいことを、速く、大量に、実行するための仕組みと体制という土台を構築できたことが、社員数の少ない我々が、大量にコンテンツを発信できるようになったブレークスルーだったと思っています。
定量データでは測れない行間にこそ、本当に大切なものは存在する
我々のようにデジタルマーケティング領域に身を置いていると、データで見える指標だけを信じたくなりがちです。
データドリブンで意思決定をしていくことは大前提大切なのですが、その前提は「データで見えないものを評価しなくていい」という話とイコールではありません。
ここまでの3年間を振り返ると、データで見えない行間にこそ大切なものは多かったと考えています。
たとえば、先ほどご紹介したYouTubeやメルマガは、直接的なコンバージョン(ラストクリックでのコンバージョン)に繋がることはほとんどありません。
ただし、良い情報を大量に提供し続けたからこそ、将来困ったタイミングで「LANYに相談してみよう」となる確率を高められていることも事実です。
もし定量データだけを見て判断していたら、2〜3年間継続する前に、どこかで投資対効果が見合わないとなって施策を中断していたでしょう。
特にBtoB領域は、サービスやプロダクトの導入までのプロセスが長かったり、検討に多大な時間を要することが多いので、ラストクリックの指標だけを追いかけてしまうと成果が出なくなりがちです。
よって、定量データでは測れない行間を無視することなく、本当に大切なものが何かを常に考えながら、時には「定量データではわからないけど、定性的に正しいと信じる」こともしながら成果に向かって走り続けたことが成長に繋がったと思っています。
現在、新たに取り組んでいること
LANYは、今後も事業成長をさせ続け、ミッションである「価値あるモノをインデックスさせる」を体現します。
基本的にはこれまで通り、コンテンツマーケティングを通してより事業拡大をさせたいと考えておりますが、より高い成長角度を目指す上で、カテゴリーエントリーポイントを増やすことが重要になると考えています。
カテゴリーエントリーポイントとは、要は「〇〇といえば、LANY」の〇〇に入るもののことで、SEOという軸はブレさせずにより多くのカテゴリーエントリーポイントを今後は手に入れていきたいです。
絶賛社員数も拡大中なので、それぞれの社員の得意なことを活かして、それぞれのカテゴリーエントリーポイントを手に入れてほしいと考えています。
- SEO×BizOps
- SEO×CVR
- SEO×多言語
- SEO×リスティング広告
…
これまでの取り組みで見えてきた我々の勝ち筋を踏襲しつつ、戦う領域(カテゴリー)を広げていきながら、更なる事業成長を目指していきたいです。
まとめ
創業3年のスタートアップが、レッドオーシャンの市場でどのように事業成長をさせてきたのかをまとめてみました。
社員が少なくても、市場が寡占されていても、戦い方さえ工夫すれば事業を伸ばすことはできますし、自分たちが成し遂げたいミッションに向かって走っていけると思います。
少しでも参考になる施策や考え方があったと思っていただけたら嬉しいです。
Profile
竹内 渓太(たけうち・けいた)
株式会社LANY 代表取締役。
リクルートホールディングスのネットマーケティング室に新卒で入社し、求人サイトのSEOやデジタル広告運用、B2Bマーケティングを実施。その後、独立し、LANYを創業。SEOを強みとするデジタルマーケケティング支援のコンサルティングを実施。