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インタビュー

映画化を成功させたギンビス・宮本周治代表が語る、“変わらぬ味”を支える、品質へのこだわりとマーケティング

最終更新日:2025.08.21

CEO Interview #33

ギンビス

代表取締役社長

宮本 周治

「アスパラガスビスケット」や「たべっ子どうぶつ」など、日本中で親しまれるロングセラー商品を手がける老舗お菓子メーカー、ギンビス。

1930年の創業から95年。常に「味と品質が第一」の姿勢を大切に守りながら、有名企業とのコラボレーションやお菓子の世界観の映画化など、挑戦的なマーケティング施策でも注目を集めてきました。

今回はギンビス 代表取締役社長の宮本周治さんをインタビュー。変わらぬ味と品質への徹底したこだわりから映画化の舞台裏、「お菓子を通して世界平和に貢献する」という壮大なビジョンまで、宮本さんの想いを伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

毎日食べても飽きない、ギンビスが守り続ける“いつもの味”

――ギンビスの中でも「アスパラガスビスケット」の誕生は1968年。「たべっ子どうぶつ」も1978年にできたロングセラー商品ですね。こんなに長く愛される魅力や秘密はどこにあるとお考えですか。

一番の理由は、味と品質が変わらない点にあると思います。アスパラガスビスケットは、現在の巾着タイプのパッケージになる前に、一斗缶から量り売りしていた時代もあり、販売開始からおよそ60年が経ちます。その間、気候変動などによる原材料の変化や、人・設備の入れ替わりがある中で、変わらぬ味と品質を再現し続けるのは非常に難しいことです。焼き加減や塩加減など、いずれかが変わるだけでも味に大きな影響が出てしまいます。

宮本周治さん

アスパラガスビスケットは、焼き加減に特徴があり、「深焼き」と呼ばれる、よく火を通す製法を採用しています。この技術は難度が高いのですが、ギンビスは得意です。さらに、焼き上げた後にかける塩加減が絶妙で、深焼きによって生まれる香ばしさと調和し、飽きのこない味に仕上がっています。カリッとした食感と絶妙な塩加減。味が濃すぎず、甘すぎることもない、シンプルな味わいだからこそ、白米のように毎日食べられるお菓子になっています。そのスタイルを変えずに守り続けてきたことが、長年にわたりお客さまに親しまれている理由だと思います。

――社長も毎日食べてチェックしていると聞きました。

はい。私自身、味と品質に最もこだわっているため、前日に工場で製造されたアスパラガスビスケットやたべっ子どうぶつなどの製品を毎日欠かさず食べ、少しでも違和感を覚えた場合は、すぐに工場へ確認しています。

それだけでなく、コンビニエンスストアやスーパーマーケットにも直接足を運び、店頭で販売されている自社商品を実際に購入して味を確認しています。もちろん工場での品質管理は徹底していますが、最終的にお客さまの手に渡る商品が、いつでも変わらず美味しい状態かどうかは常に気になります。

経営には売り上げや利益など、さまざまな要素がありますが、私が最も重視しているのは、商品そのものの味と品質です。いつ食べても同じ味・品質であることが大前提であり、その軸がぶれると、全てが崩れかねません。だからこそ日々、味と品質の確認を欠かさず行っています。

宮本周治さん

コラボ戦略と映画化。相乗効果でファン層を拡大

――飽きさせない工夫についてはどうですか。再現性高く同じ味と品質を維持できていても、飽きがくることもあると思うのですが、ロイヤルティの高い顧客を惹きつけ続ける工夫はありますか。

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・海外展開の鍵は「一過性ではなく、続けること」
・トランプ大統領と同窓生。米ミリタリー・アカデミーで学んだこと
・お菓子を「暮らしの必需品」へ

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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