マーケターの業務にAIを活用するのが当たり前の時代になり、マーケティングの考え方、向き合い方に変化が生まれています。
マーケターがAI時代に業績を伸ばし、CMOを目指して組織や事業をリードするためには、どんなことを意識すれば良いのでしょうか。
今回は、積水ハウス イノベーション&コミュニケーションでCMO(Chief Marketing Officer)兼CDDO(Chief Digital & Data Officer)を務める木田浩理さんに話を伺いました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
目次
現場に出てわかった、データ分析のあるべき姿
――木田さんは、国内最大手の通信キャリア、外資系IT企業、大手百貨店、大手損害保険会社、さらには政治家秘書など、多様なキャリアを積まれています。その中で、マーケティングの道へ進もうと決めたきっかけは何でしたか。
業界や立場は違っても、私自身は一貫して「人はなぜ動くのか」「行動を変えるきっかけは何か」を考え続けてきました。正直なところ、当初からマーケターになろうと考えていたわけではありません。営業職としてキャリアをスタートする中で、一貫して関心を持ち続けてきたテーマが、「人の意思決定や行動は、何によって引き起こされるのか」という問いでした。

政治家秘書として働いていた頃に気づいたのですが、政策論争そのものが有権者の行動に直結するケースは必ずしも多くありませんでした。むしろ、「葬儀に参列しなかった」「地域の夏祭りに顔を出さなかった」など、日常的で身近な振る舞いのほうが、投票行動に影響を与える場面を数多く目にしてきました。
そうした意思決定や行動のメカニズムを、データ分析によって解明できないかと考えたことが、現在につながる出発点です。外資系IT企業から百貨店へ転じた際には、「データサイエンティストとマーケターの両方の視点を持つ存在になりたい」と考えていました。
また、営業の現場にいた経験から、当時の日本では「現場理解が十分とは言えないまま、データ分析を行っているケースが少なくない」と感じることがありました。だからこそ、現場とデータの橋渡しを担う存在、いわば「ビジネストランスレーター」としてのキャリアを築くことが、自分にとって価値のある道だと考えるようになったのです。
――ビジネストランスレーターとして、データサイエンティストとマーケター、両方の役割を担い、さらに現場とも接続するわけですね。
はい。百貨店で働き始めた当初は、データ分析を行い、そこから得られたインサイトを具体的な施策に落とし込んで、営業や現場で働く方にお伝えしていたのですが、それだけでは販売員の皆さんが動いてくれないときがありました。
そこで、現場の感覚を理解したほうがいいという上司のアドバイスもあり、実際に婦人服売り場内のデニム売り場をメインで担当し、日々の売り場づくりや接客、商品選定に携わりました。
この経験が、結果として現在のキャリアにつながる大きな転機になりました。現場での判断や感覚を体感したことで、データサイエンスとマーケティングの掛け合わせを、いわば「肌感覚」で理解できるようになったのです。その結果、このキャリアに強く惹かれるようになりました。
――その百貨店でのご経験の中で、当時はうまくいかなかったと感じたことや、後から振り返って気づいた課題はありましたか。
当時は、データサイエンスの有効性をやや過信していた部分があったと思います。しかし、実際に婦人服売り場で、データ分析に馴染みのない販売員の方々に対して、データやマーケティングの話をしても、なかなか会話が噛み合いませんでした。
販売員が日々向き合っているのは、一人ひとりのお客さまです。そうしたナラティブな世界と、データサイエンティストが用いるモデルや分析の言語との間には隔たりがあり、現場では違和感が生まれ、少し摩擦や衝突が生じてしまいました。
何が問題だったのかを考えたとき、「自分自身が現場を十分に理解していないのではないか」と気づきました。そこで、百貨店の販売員の業務の中に実際に入れてもらい、正月のセールでは一緒に法被を着て福袋を販売し、裾上げ作業にも携わるなど、見習いとして販売業務を共に担当しました。
そのように一緒に働く経験を通じて、現場がどのような点に悩み、どんな伝え方であれば理解や共感を得られるのかを、ようやく実感できました。次第に販売員の方々も、同じ目線で働く仲間として接してくれるようになりました。
この「同じ立場に近づいていき同質化していく」経験が重要で、私のキャリアの中でも強く印象に残っています。この経験は、現在CMOとして組織を見る際のスタンスにもつながっています。信頼関係が築かれた後であれば、施策の実行やデータ分析、マーケティング活動についても、現場は主体的に協力してくれます。その前提となる信頼をいかに獲得するか。それが、とても重要だと学びました。
――なるほど、それがまさに「人を動かす」ということなのですね。
そうですね。最終的に私が部署異動することになった際には、涙を流してくださる方もいて、強く印象に残っています。現場で築いてきた関係性が伝わった瞬間でもあり、個人的にも大きなやりがいと喜びを感じました。

積水ハウスの新しい挑戦を支える仕事
――それはいい話ですね。次に、現在お勤めの積水ハウス イノベーション&コミュニケーション(以下、積水ハウス イノコム)について伺います。2024年に設立された比較的新しい会社で、まだ一般的な認知は高くないかもしれません。どのような役割を担う会社なのでしょうか。
積水ハウス イノコムは、積水ハウスグループにおいて、オープンイノベーションを中核的に担う会社です。住まいや暮らしといった領域は、関わるステークホルダーも多く、単一の専門性だけでは課題解決が難しい分野でもあります。
そのため、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の機能を持ち、住まいや暮らしに関わるさまざまな社会課題に対して、外部のパートナー企業やスタートアップと協業しながら課題解決に取り組んでいます。そうした取り組みを進める上で、データ、マーケティング、現場、経営を横断的につなぐ役割が不可欠でした。
また、人材育成の機能も有しており、社内でビジネストランスレーターの育成にも注力しています。
もともと積水ハウス イノコムとの出合いは、私の共著である『ビジネストランスレーター』(日経BP)を、イノコムの皆さんが読んでくださっていたことがきっかけでした。私が損害保険会社に勤務していた頃、イノコムの方から「このメソッドを活用させてほしい」とお声がけいただき、意見交換を重ねる中でご縁が深まりました。積水ハウス イノコムには、積水ハウスグループ各社から選ばれた優秀な人材が集まっています。また、積水ハウス本体の経営層とも距離の近い組織であるため、意思決定の中枢に迅速に関与できる点も、積水ハウス イノコムの特徴の一つです。
私自身はCMOおよびCDDOを務めており、これまで現場とデータの両方に関わってきた経験を活かして、データ人材の育成やDX、AI、マーケティングに関して、積水ハウスグループ全体が抱える課題への支援を行っています。
――具体的に、日々どのような仕事をされているのですか。
積水ハウスグループ各社が抱えるマーケティング上の課題解決や、デジタルマーケティング施策に関する助言、AI活用に関する相談対応など、幅広いテーマについて社内シンクタンクのような立場で、横断的にアドバイスや支援を行うのが主な役割です。
――社会課題とは、例えばどのようなものがありますか。
一例として、「保育園留学」を手掛けているキッチハイク社へ出資していますが、都市部の保育園では、立地の制約から十分な屋外遊びの環境を確保することが難しいケースもあります。そうした場合に、自然環境に恵まれた地方の保育園に一定期間通うことで、子どもがのびのびと遊ぶ体験ができ、結果として親子双方の意識や生活にポジティブな変化が生まれることが期待されています。
このような取り組みを行うスタートアップと連携しながら、事業づくりに関われる点は意義深く、やりがいのある部分だと感じます。

組織は感情で動く──人間関係と意思決定の捉え方
――ご自身では、これまでのキャリアの中で、人よりも意識してきたことや、結果的に強みになっていると感じる点はどのようなところですか。
人との関係性を築くことだと思います。人との関係を大切にしてきたため、これまで複数の会社を経験してきても、今もつながりのある方が数多くいます。
CMOという立場ではありますが、基本的には常に現場に入り、メンバーがやりたいことを後押しするスタンスです。リーダーシップで強く引っ張るというよりも、多くの意見に耳を傾け、働きやすい環境を整えることに注力してきました。
あとは、本を多く読んできたことも大きいと思います。30歳前後からはジャンルを問わず、年間にするとおよそ数百冊のペースで読書を続けてきました。そうした積み重ねが、今の思考や判断の土台になっていると感じます。
――組織の中にいると、良い人もいれば、対応に悩む人もいて、人間関係に苦労する方は少なくありません。木田さんが、これまで比較的うまくやってこられた背景には、どのような工夫があったのでしょうか。
『ビジネストランスレーター』という書籍でも触れたのですが、組織には、認知心理学でいう「スキーマ」(※)に近い、意思決定や行動のパターンが存在します。例えば意思決定のスキーマで言えば、形式上はAさんが部長という立場にあっても、実際にはBさんが影響力を持ち、意思決定に大きく関与している、といったケースです。私自身、新しい施策や提案を進める際には、こうした関係性や力学を整理し、誰とどの順番で話すべきかを考えるようにしてきました。こうした組織全体の構造やキーパーソン、人間関係の力学を把握し、「どこを押さえれば人が動くのか」を理解しておくことが重要だと思います。
※スキーマ:過去の経験や知識に基づいて脳内で構造化された知識の枠組み
社内調整も、個人の処世術ではなく、組織を前に進めるための構造理解として捉えるべきだと思います。米国では「組織行動論」という経営学の一分野として体系的に研究されており、組織の意思決定や人の動き方を分析するための重要な対象になっています。日本では感情的、あるいはネガティブに捉えられがちですが、迅速かつ円滑な意思決定を行うために、誰にどのような形で根回しをすべきか、この組織ではどのようなメカニズムで人が動いているのかを整理しておくことは、実務上きわめて合理的だと思います。私はそうした関係性を、可能な限り関係図として可視化し、理解するようにしてきました。
――その過程では、時に自分を抑えて我慢する場面も出てきます。プライドとの兼ね合いは問題ありませんでしたか。
マーケティング組織をつくり、成果を出すという大きな目的がありますから、そこはグッと抑えることができました。下手に肩ひじを張って無用なコンフリクトを生んでも、組織は前に進みません。
組織は人間の感情の集合体です。嫉妬や不快感といった感情的な要素を無視して、組織運営はできないと考えています。
――CMOになると、嫉妬されるなどネガティブな感情を向けられる機会も増えると思います。そうした場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
幸いなことに積水ハウス イノコムでは全くそういうことがありません(笑)。多くの業界を見てきましたが、これほど心理的安全性の高い環境が保たれているのは稀有であり、転職して半年ほど経った今も、日々驚いています。
ただ、これまでの経験上、もしそうなった場合は相手のところへあえて直接話をしに行くのがいいと思います。一方的な誤解によってネガティブ感情が起きているケースもあります。また、世界的なベストセラー『影響力の武器』という本で紹介されている「返報性の原理」にもあるように、その人が困っていることを助けることで、こちらに向けられていた負の感情が和らいだり、解消されたりすることが少なくありません。
人の感情に配慮する行為の積み重ねが大切です。特に私のように外部から転職してきた人間は、こうした点を意識することで、スムーズにオンボードしやすくなると思います。
積水ハウスグループのオープンイノベーション施設「イノコム・スクエア」
「マーケに詳しい部長」で終わらないために
――CMOになるために必要なスキルやマインドセットについて、どのようにお考えですか。特に課長クラスの中堅層で、これからさらに成長し、将来的にCMOを目指したいと考えているマーケターへのアドバイスをお願いします。
そもそも、マーケターとCMOとでは、求められる役割と評価軸が大きく異なります。課長クラスの方がCMOを目指す上で、まず理解しておくべきなのは、この評価軸の違いです。
マーケターが主に個別施策や機能単位の成果で評価されるのに対し、CMOは事業全体の成長や中長期のPL(損益計算書)に責任を持つ立場だからです。マーケターの中には、キャリアの最終到達点がCMOであり、マーケティング業務の延長線上にCMO職があると考えている方がいらっしゃいます。
私は必ずしもそうではないと思います。この違いを理解するためには、マーケティングの現場だけでなく、事業運営そのものに触れる経験が不可欠です。私自身、婦人服売り場での現場経験を通じて学んだように、現場での実務経験に加えて、経営戦略の立案、数値責任を伴う意思決定と実行、組織を横断的に管掌する経験などがなければ、CMOを務めるのは難しいでしょう。マーケターをしていれば、自然とCMOになれるわけではないのです。
内部からマーケターとしてステップアップしていくには、顧客理解と顧客起点の思考を徹底し、事業全体を見渡したグランドデザインの「勝ち筋」を描く構想力を身につけることが重要です。これまで延長線上で行われてきたさまざまな施策に対して、必要であれば「NO」を示し、その上で「代わりに、こういう打ち手があります」と、自身の戦略をデータ分析に基づいてロジカルに経営層へ説明し、納得を得ながら巻き込み、予算を獲得して、組織規模を拡大していく。そうした経験を積んでいけると、CMOとしてふさわしいと評価されるでしょう。
経営層は常に会社の未来を見据えています。そのためCMOには、経営層と同じ目線に立ち、「さらに、こうしたシナリオも考えられます」と中長期の視点で提案する姿勢が求められます。いきなりその目線に立つのは簡単ではありませんが、課長クラスなら、部長レベルにとどまらず、経営層の視点も意識する必要があります。
あるいは、お客さま視点から切り込む方法もあります。「自社はお客さまから、このように見られています」と、これまで経営層が十分に気づいていなかった視点を、データやファクトで裏付けて提示できることも、CMOに求められる重要な役割です。
――自分の肩書の1つか、2つ上のレベルで思考が留まっているようでは不十分ということですね。
そうですね。そこを理解していないと、単に「マーケティングに詳しい部長」で終わってしまう可能性が高いと思います。肩書そのものよりも重要なのは、会社全体を俯瞰し、一歩先、二歩先を見据えた構想力を持って、これまで何を変えてきたのか、そしてこれから何を、どのように変えていきたいのかを、明確な言葉で語れることです。そうした力こそが、マーケターとしてのキャリアを形づくっていくのだと思います。
――そのようなCMOになるために、意識して学ぶべきことは何でしょうか。
キーワードは「総合力」です。ここで言う総合力とは、すべてを自分で完璧にこなす能力ではなく、各領域の役割や限界を理解した上で、AIを駆使しながら適切に判断し、つなぎ、意思決定できる力のことです。マーケティングだけを学んでも、経営戦略の全体像は見えてこないかもしれませんし、データ分析の力がなければ、自身の主張をファクトで証明することも難しい。さらに、口コミや評判を読み解くソーシャルリスニングの視点なども欠かせません。
それぞれの分野において、局所的に強みを持つ、戦術的なマーケターは数多くいます。しかし、CMOを目指すのであれば、何か一分野の専門家であること以上に、「戦略家」として営業も含めた事業全体を俯瞰し、各領域を「広く浅く」でも理解しておくことが重要です。

AI時代に求められるマーケターの新しい条件
――その質問と重なりますが、AI時代のマーケターに求められる能力については、どのようにお考えですか。
AIの進化によって「何ができるか」では差がつきにくくなり、「どれを選ぶか」「なぜそれを選ぶのか」が、これまで以上に問われるようになっています。前職では大手企業でCMOを務めていたため、現場で自ら手を動かす機会は多くありませんでした。しかし現在は、組織規模も比較的コンパクトなため、CMOであっても自分で実務に関わる場面が増えています。
そこで実感しているのは、分析作業やコンテンツ生成といった業務が、AIによって非常に高速かつ効率的に行えるようになったという点です。一定水準の品質であれば、多くの人が短時間で到達できるようになりました。コーディングも含め、マーケティングにおける定型的・反復的な作業の多くは、今後ますますAIに代替されていくでしょう。
しかし、だからといってマーケティングの重要性が下がるわけではありません。むしろ、重要性は一層高まると考えています。誰もが同じような分析や施策を実行できる時代だからこそ、「どの選択肢を選び、どのように意思決定するのか」が、成果の差を生むようになります。
その際に拠りどころになるのが、これまでのキャリアの中で蓄積してきた知見や経験です。特に、現場に入り、同じ立場に近づいてきた経験は、AI時代の意思決定において、より大きな意味を持つと感じています。
AIは複数の選択肢やシナリオを提示してくれるので、自らの知見、経験を軸に判断し、覚悟を決めて意思決定を行う力が、AI時代のマーケターには求められます。私が現場での経験を含めた「総合力」の重要性を繰り返し訴えている理由も、そこにあります。
もっとも、すべての領域を高いレベルで自ら実行できる必要はありません。プログラミングができなくても問題ありませんが、「このプログラムによって何が実現できるのか」を理解していることは重要です。同様に、デジタルマーケティングのすべてを自分で運用できる必要はありませんが、施策の種類や概要、期待される効果については、常に把握しておくべきだと思います。
――なるほど。そうなると、一緒に働きたいマーケター、あるいは採用したい人材像も、「総合力」を持った人になるのでしょうか。
やはり、複数の要素を横断的に理解し、組み合わせられる、いわばマルチな人材が、これからのマーケター像になっていくのではないでしょうか。私はこれを、従来の「I字型」「T字型」という人材像をAI時代に合わせて進化させた「M字型人材」と定義しています。
M字型人材とは、「Multi(複数領域)」「Medium(中くらいの基礎)」「Merge(AIとの融合)」という3つのMで構成される新しい才能の形です 。すべての領域でプロレベルを目指す必要はなく、基礎を60点程度理解している状態(Medium)を、1つや2つではない複数の領域(Multi)で積み重ねる 。そして、足りない専門性の深さはAIと融合(Merge)して補完していく 。この「Start Medium, Get Multi」という戦略こそが、AIを自在に乗りこなすための鍵になると考えています 。
例えば、UI/UXの一領域だけでの成功体験に強く依存している人や、SEOに特化した経験しか持たないような部分特化型なマーケターは、その領域自体がAIによって高度に自動化されていく中で、相対的に活躍の場が狭まっていく可能性があります。もちろん、特定分野で深い専門性を持つこと自体は、組織にとって大きな価値がありますが、それだけAIの進化が異常に速いことは認識しておく必要があります。同様に、資格取得そのものを目的化してしまう「資格偏重」の姿勢も、変化のスピードが速い時代においては、価値の陳腐化が早いと感じます。「○○検定1級」といった肩書が、必ずしも実務能力や意思決定に直結するとは限りません。
――専門性の高い職人タイプというよりも、全方位的に知見を持った人と働きたい、ということですね。
そうですね。もちろん、専門的に強みを持つ領域があること自体は大切です。ただし、その得意領域に安住せず、状況に応じて守備範囲を広げていこうとする姿勢が、より重要になってくると思います。「自分は広告運用のプロフェッショナルだ」と言い切ってしまうよりも、その知見をどう活かし、次に何を学ぶのかを考え続けられる人のほうが、AI時代には価値を発揮しやすいのではないでしょうか。
――最後に、木田さんが今後、挑戦していきたいことを教えてください。
現在は、積水ハウスグループにおけるDX人材育成やAI活用に注力しています。具体的には、データとビジネス、そしてAIを横断的につなぐ「ビジネストランスレーター」を、社内で継続的に育成していくことです。
こうした人材は、これからの企業経営において不可欠です。ビジネストランスレーターが一定数存在すれば、これまで個別最適では解決できなかった課題についても、彼らをハブとして、専門性の高い人材が柔軟につながり合う、いわばアメーバ型の組織によって、自律的に解決できるようになります。
そのための基本的なメソッドや枠組みは、すでに整いつつあります。今後は、顧客理解、データ分析、AI活用といった取り組みを特定の個人に依存させることなく、組織全体に広げ、オープンイノベーションが循環して、イノベーティブな新規事業が継続的に生まれる仕組みを構築していきます。それが、CMOおよびCDDOとして果たすべき役割だと思います。
――本日はありがとうございました。

Profile
木田 浩理(きだ・ひろまさ)
積水ハウス イノベーション&コミュニケーション株式会社 CMO 兼 CDDO。
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業/同大学院政策・メディア研究科修了。国内最大手の通信キャリア、外資系IT企業、大手百貨店、大手損害保険会社などで営業、データ分析、マーケティングを経験。損保会社ではCMOも務める。
2025年8月より積水ハウス イノベーション&コミュニケーションのCMO兼CDDOに就任。一般社団法人日本エビデンスベーストマーケティング研究機構代表理事。
共著に『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」』と『ビジネストランスレーター データ分析を成果につなげる最強のビジネス思考術』(いずれも日経BP)がある。
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