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インタビュー

シック・ジャパン 疋田智彦が語る、「情緒×機能」のマーケティング戦略とビューティグルーミングカンパニーへの事業転換

最終更新日:2026.01.19

The Marketing Native #82

シック・ジャパン

マーケティング本部長

疋田 智彦

ウェットシェービング市場で29年連続シェアトップを誇るSchick Japan(以下、シック・ジャパン)。同社は今、「シェービングカンパニー」から「ビューティグルーミングカンパニー」への転換を掲げ、新ブランドのローンチやプロモーション投資を加速させています。

施策を牽引する中心の一人が、マーケティング本部長の疋田智彦さんです。

今回は疋田さんをインタビュー。事業転換を支えるマーケティングの裏側、新ブランドに込めた狙い、社員が誇れる組織づくりへの考え方について話を伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

顧客を動かすストーリーは、美容師とバーテンダーが教えてくれた

――シック・ジャパンのコーポレートサイトを見ると、「最も革新的なビューティグルーミングカンパニー」と掲げられています。新ブランドのローンチ、商品開発、プロモーションなど、積極的な投資を行っている印象があり、そのあたりについて伺えればと思います。 

まずは疋田さんご自身について、キャリアの歩みから教えてください。新卒で日本ロレアルに入社し、その後バカルディ・ジャパン、ヘンケルジャパンを経て、現在のシック・ジャパンにジョインされた、という理解でよろしいでしょうか。

そうですね。実はロレアルには営業職として入社しました。父が大手企業で営業職を長く勤め、トップまで昇進して大きな組織を動かしている姿を見て育ったため、私自身も営業にあこがれを持っていました。ところが入社2年目に所属していた部署が日本のビジネスをクローズすることになり、そのタイミングでマーケティング部へ異動しました。当時、営業からマーケティングへ異動したのは私が初めてだったそうです。

シック・ジャパン マーケティング本部長 疋田智彦さん

その後、途中でビジネススクールに通うなどしながら、現在まで一貫してマーケティングに携わってきております。

――ロレアルではどのような業務を担当していましたか。

ロレアル時代の13年間は、BtoBマーケティングを担当していました。美容室サロン向けのマーケティングで、一般消費者ではなく、美容師の方々への教育が主な業務でした。製品の営業提案にあわせて、使用方法に関する教育プログラムを提供しており、商品開発だけでなく、「美容師という顧客に対してどのように価値を伝え、販売につなげるか」というストーリー設計を学ぶことができました。

その後、バカルディへ転職したのですが、実はお酒の会社でありながら、当時の私はほとんどお酒を飲めませんでした。

――お酒を飲めないのに、どのように顧客の気持ちを理解したのですか。

まずは3カ月ほど営業担当者と同行し、徹底的に現場を回りました。特に参考になったのは、お酒に精通したバーテンダーの皆さんの話です。お酒の歴史や味の種類、製法に関する知識だけでなく、どのような思いで提供しているのか、お客さまはどんな方が多く、どのような気分で来店しているのかなどを丁寧にヒアリングしました。そうした対話を重ねるうちに、ロレアル時代に美容師の方々と向き合っていた経験と近い構造があると気づいたのです。

ですから、商品についてはバカルディの先輩方から基礎知識を学びつつ、お酒のカルチャーについてはバーテンダーの方々に教えていただきました。また、消費者視点を理解するために、スーパーやコンビニに頻繁に足を運んで市場調査を行うなど、精力的に勉強しました。その結果、転職後すぐに体重が12キロ増えてしまいましたが(笑)、それくらい必死だったことを覚えています。

その後、ヘンケルを経て、シックが「シェービングカンパニーからビューティグルーミングカンパニーへと転換する」というビジョンを掲げて、ビジネスの変革を起こそうとしていることに興味を持ち、応募してシックに入社しました。

シック・ジャパン マーケティング本部長 疋田智彦さん

安全・安心の圧倒的な土台が支える情緒起点のマーケティング

――あらためて「マーケティングとは何か」と聞かれたら、どのように答えますか。

ひと言で表現するなら、「情緒と機能のバランスを取りながら、ワクワクするストーリーを創り出すこと」だと考えています。商品開発も含め、どのようにすれば新しい体験に基づく魅力的なストーリーをマーケティングによって生み出せるのか、常に意識しています。

情緒については動機づくりの要素が強く、最終的な購入理由は機能性の高さにあると思っています。シェーバー市場は従来、「5枚刃」「◯◯コーティング」などの機能訴求から入るのが一般的でした。もちろん、その訴求によって購入されるお客さまも多いのですが、当社がビューティグルーミングカンパニーへの事業変革の一環として取り組んでいるのは、まず情緒的なコミュニケーションから入り、その上で機能性をしっかり伝えるというアプローチです。

情緒的な動機づくりから機能的な理由づくりまでを、商品、コミュニケーション、プロモーションを組み合わせて設計し、お客さまにワクワクする体験を提供する。これが私にとってのマーケティングです。

――ありがとうございます。シックはウェットシェービング市場で、29年連続シェアトップとのこと。これは非常に大きな実績だと思います。背景にはどのような要因があるのでしょうか。

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・「シェーバーは化粧品」という気づきが導く、ブランド変革のスタートライン
・プロジスタのマーケティング施策と、市場の反応
・社員が誇れる会社へ――シックが目指す次のステージ

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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